現役医師 Dr. K が厳選した、健康・医療・金融の今朝のヘッドライン。
おはようございます。連休明け、木曜日の朝のレポートをお届けします。
今日の隠れたテーマは 「その分け方で、いいのか」。今日の主題は、COPDの新薬の試験です。これまでのCOPDの生物学的製剤は「血中の好酸球が多い人」に絞って使われてきました。この試験は、好酸球数で患者を選びませんでした。それでも増悪は約3割減っています。そして連休前の9月18日、日銀が31年ぶりの水準まで利上げしたのに、円は安くなりました。日経平均は882円高、けれどTOPIXは下落。いつもの分け方が、うまく効かない場面が続いています。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。
連休前の9月18日、厚生労働省が第37週(9/7〜13)の全国集計を公表しました。
| 項目 | 第37週 | 第36週 |
|---|---|---|
| 全国の定点当たり報告数 | 5.54 | 3.29 |
| 報告数 | 20,697人 | 12,299人 |
| 前週比 | +68.3% | — |
| 昨年同期との比較 | 7.6倍 | (約6.6倍) |
都道府県別(定点当たり):
| 都道府県 | 報告数 |
|---|---|
| 沖縄 | 16.61 — 注意報レベル(10人)を超えた |
| 茨城 | 9.85 |
| 東京 | 9.53 |
| 神奈川 | 9.45 |
| 埼玉 | 9.10 |
同じ9月18日に公表された新型コロナの第37週は、全国の定点当たり 2.37(前週1.71)でした。インフルエンザとコロナが、同時に増えています。
| 感染症 | 第36週 | 第37週 |
|---|---|---|
| インフルエンザ | 3.29 | 5.54 |
| 新型コロナ | 1.71 | 2.37 |
連休明けに確認しておきたいこと:
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| インフルエンザワクチン | 医療機関への着荷は10月ごろの見込み(9/10号)。来週にはその答え合わせができます |
| 第38週の公表 | 明日9月25日(金) |
| 休日・夜間の相談先 | 子どもは #8000/大人は #7119(実施している地域のみ) |
吸入の標準治療を続けていても増悪を繰り返すCOPDの患者さんに、IL-33を阻害する抗体 トゾラキマブ を上乗せした、同じ設計の第3相試験2本の結果です(OBERON・TITANIA/NEJM 2026年9月8日オンライン版)。
ここが要点です:COPDに対する既存の生物学的製剤は、血中の好酸球が多い患者さんに絞って効果が示されてきました。この試験には、好酸球数による参加条件がありません。
| 研究の設計 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 前年に増悪歴のあるCOPD(現喫煙者・元喫煙者の両方)。好酸球数の基準なし |
| 人数 | OBERON 446人 vs 431人/TITANIA 438人 vs 435人 |
| 介入 | トゾラキマブ 300mg を4週ごとに皮下注、52週間(標準の吸入維持療法に上乗せ) |
| 主要評価項目 | 元喫煙者における中等度・重度の増悪の年間発生率 |
| 主な副次評価 | 全体集団での同じ指標 |
結果(中等度・重度の増悪、年あたりの回数):
| トゾラキマブ | プラセボ | 率比 | |
|---|---|---|---|
| 元喫煙者(OBERON) | 1.34 | 1.90 | 0.71(95%CI 0.57〜0.88、P=0.002) |
| 元喫煙者(TITANIA) | 1.37 | 2.07 | 0.66(95%CI 0.55〜0.80、P<0.001) |
| 全体集団(OBERON) | 1.41 | 2.00 | 0.70(95%CI 0.58〜0.85、P<0.001) |
| 全体集団(TITANIA) | 1.44 | 2.03 | 0.71(95%CI 0.59〜0.84、P<0.001) |
| 有害事象 | トゾラキマブ | プラセボ |
|---|---|---|
| OBERON | 70.4% | 77.2% |
| TITANIA | 80.1% | 79.8% |
肥大型心筋症(HCM)のうち、左室からの出口が狭くなっていない「非閉塞性」の患者さんに、心筋ミオシン阻害薬アフィカムテンを使った第3相試験です(ACACIA-HCM/NEJM 2026年8月28日オンライン版)。
背景:この種の薬は「閉塞性」の患者さんで効果が示されてきました。非閉塞性には、確立した薬物療法がありません。
| 研究の設計 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 症状のある非閉塞性HCM 517人(アフィカムテン 258人 vs プラセボ 259人) |
| 背景 | 平均 55.1歳、女性 53.6% |
| 介入 | アフィカムテン(開始5mg、最大20mg)を最長72週 |
| 二重の主要評価項目 | 36週時点の ①最高酸素摂取量 ②KCCQ-CSS(生活の質、0〜100点) |
結果:
| 評価項目 | アフィカムテン | プラセボ | 差 |
|---|---|---|---|
| KCCQ-CSS の変化 | +11.4点 | +8.4点 | 3.0点(95%CI 0.5〜5.5、P=0.02) |
| 最高酸素摂取量の変化 | +0.64 | −0.03 | 0.67 mL/kg/分(95%CI 0.22〜1.11、P=0.003) |
| 安全性 | アフィカムテン | プラセボ |
|---|---|---|
| 左室駆出率が50%未満に低下(可逆的) | 27人(10.5%) | 2人(0.8%) |
| 重篤な有害事象 | 52人(20.2%) | 38人(14.7%) |
9月18日、日銀が政策金利を1.25%程度へ引き上げました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 政策金利 | 1.25%程度(0.25%の引き上げ) |
| 決定 | 賛成7・反対2 |
| 水準 | 1995年以来、およそ31年ぶりの高さ |
| 間隔 | 6月会合以来 3か月ぶり(利上げのペースを速めた) |
| 植田総裁の発言 | 2%の物価目標のため「引き続き政策金利を引き上げる」。連続利上げや利上げ幅の拡大も、物価の上振れリスク次第で「排除しない」 |
同じ日の朝に出た、8月の全国CPI:
| 指標 | 結果 | 前月 |
|---|---|---|
| コア(生鮮食品を除く) | +1.7% | +1.8%(市場予想も+1.8%) |
| 新コアコア(生鮮・エネルギーを除く) | +1.9% | +1.9% |
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 日経平均 終値 | 65,018.95円(前日比 +882.70円、+1.38%)— 3日続伸、9月10日以来の6万5,000円台回復 |
| 日中 | 一時1,300円超高。連休前の利益確定で上げ幅を縮めた |
| TOPIX | 4,091.14(−3.05)— 反落 |
| ドル円(18日16時) | 156円90銭 → その後 一時158円台 |
東京が休んでいた3日間も、海外の市場は動いていました。
| 9月22日のニューヨーク | 数値 |
|---|---|
| NYダウ | 51,863.69ドル(−185.14ドル)— 長期金利の上昇を嫌気 |
| ナスダック総合 | 27,244.28(+122.19)— 連日の最高値更新 |
| ドル円(9月23日のNY) | 157円76銭 → 158円40銭まで上昇 |
私たちは、いつも何かで分けています。好酸球が多いか少ないか。閉塞性か非閉塞性か。喫煙中か、やめたか。
分けること自体は悪くありません。効く人に効く薬を届けるための工夫です。ただ、その分け方が本当に正しいかは、別の問題です。
今日の主題の試験は、好酸球で患者を選びませんでした。これまで「効きそうな人を見分ける目印」とされてきた線を引かずに、増悪は約3割減りました。1.90回が1.34回へ。
もう1本は、「閉塞していないタイプ」の肥大型心筋症に効果を示しました。これまで薬がなかった領域です。ただし生活の質の差は3.0点。左室駆出率が50%を切った人が10.5%。——分け方を越えて届いたけれど、届き方は控えめでした。正直に、両方を書いておきたいと思います。
お金のほうも、分け方が効かない週でした。日銀は31年ぶりの水準まで金利を上げました。普通なら円高に振れるはずです。でも円は158円台まで安くなりました。反対票が2つあったこと、日米の金利差がまだ大きいこと——理由はいくつもあります。
日経平均は882円高で、TOPIXは下落。連休中のニューヨークも、ダウは下げてナスダックは最高値。「株は上がったのか、下がったのか」に、一言で答えられない日が続いています。
インフルエンザの数字も同じです。全国平均は5.54。でも沖縄は16.61で、すでに注意報レベルを超えています。全国という分け方では、沖縄の今は見えません。
分けるのをやめる必要はありません。ただ、「その分け方で合っているか」を、ときどき問い直す。今日の2本の論文は、それをやって成果が出た例だと思います。
連休明けの初日です。外来は混むかもしれません。ご自愛ください。木曜日、今日も良い一日を🩺💰