現役医師 Dr. K が厳選した、健康・医療・金融の今朝のヘッドライン。
おはようございます。水曜日の朝のレポートをお届けします。
今日の隠れたテーマは 「第一報は、最終版ではない」。ロシアのペスト研究所で職員が亡くなった件では、隣の地域の首長が「ペストで死亡した」と投稿し、のちに「可能性がある」と書き換えました。今日の主題は、長引くコロナ後のだるさに効く薬を調べた臨床試験が、いったん撤回され、書き直されて再掲載された件です。何が書き換わったのかを、元の版と並べて読みます。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。
ロシア・イルクーツク近郊のペスト対策研究所に勤める28歳の女性職員が死亡しました。当局は「原因不明の肺炎」と発表し、研究所での事故も確認されなかったとしています。一方、隣接するブリヤート共和国の首長は「ペストが原因で死亡した可能性がある」と述べ、発表が食い違っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設 | イルクーツク近郊(シェレホフ)のペスト対策研究所 |
| 亡くなった人 | 28歳の女性職員 |
| ロシア当局(ロスポトレブナドゾル)の発表 | 診断は「原因不明の肺炎」。検体から職務に関連する微生物は見つからず、研究所での事故は確認されなかった。地域の衛生・疫学状況は「安定している」 |
| ブリヤート共和国首長の発言 | 当初「ペストで死亡した」と投稿し、のちに「ペストで死亡した可能性がある」に修正 |
| 独立系メディアの報道 | 女性が9月下旬にペスト菌の入った試験管を割った可能性を報道(当局の発表とは食い違う) |
| 接触者 | 約200人が医学的な観察下に。現時点で発症の兆候はなく、検査は陰性と報道 |
| 米国の反応 | 米国務省報道官が4日、肺ペストが原因の可能性がある死亡事案を把握していると発表 |
明日10月8日(木)13時から、厚生労働省の予防接種基本方針部会が開かれます。議題の1つ目は「HPVワクチンの男性への接種に係る課題について」です。10/6号でお伝えしたとおり、7月の小委員会では費用対効果の評価が、効果の持続期間の仮定で大きく変わることが示され、定期接種化の了承は先送りされていました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時 | 10月8日(木)13:00〜16:00 |
| 会議 | 第78回 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 |
| 議題 | (1) HPVワクチンの男性への接種に係る課題について (2) 予防接種法の一部を改正する法律の成立について(報告) |
| 配信 | YouTubeでライブ配信予定(開催後の視聴は不可) |
| 7月の費用対効果(基本分析・持続20年) | 1億7,144万円/QALY(持続50年では3,232万円) |
長引くコロナ後遺症(ロングコビッド)の倦怠感に、フルボキサミンとメトホルミンが効くかを調べたブラジルの無作為化試験です。Annals of Internal Medicineに3月31日に掲載された論文が10月6日に撤回され、同時に書き直した版が再掲載されました。フルボキサミンの効果の数字は同じですが、メトホルミンの経過と結論、有害事象の割合が書き換わっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験 | REVIVE試験(NCT06128967)。ブラジルの外来施設、プラセボ対照・適応的無作為化試験 |
| 対象 | 新型コロナ感染確定後、90日以上(再掲載版では90日〜24か月)だるさが続く成人 399人 |
| 介入 | フルボキサミン100mg 1日2回、メトホルミン徐放剤、またはプラセボを60日間(90日目まで追跡) |
| 主要評価 | 疲労重症度スケール(FSS)の変化 |
| 資金 | Latona Foundation |
元の版(3月)と再掲載版(10月)の要旨を並べると:
| 項目 | 元の版(3月31日掲載・撤回) | 再掲載版(10月6日) |
|---|---|---|
| フルボキサミンの効果(FSS、プラセボとの差) | 60日目 −0.43、90日目 −0.58 | 同じ(優越の事後確率 99%) |
| メトホルミンの用量 | 750mg 1日2回 | 750mg(71人)→ 2024年5月に500mg(40人)へ減量 → 2024年9月に無益として中止 |
| メトホルミンの結論 | 「有意な効果なし」 | 「結論が出せない(inconclusive)」 |
| 有害事象(フルボキサミン) | 20.0% | 24.0% |
| 有害事象(メトホルミン) | 28.8% | 750mg 45.1%/500mg 42.5% |
| 有害事象(プラセボ) | 29.7% | 35.5% |
| 限界に追加された記載 | — | 副作用による脱落のため、データ安全性モニタリング委員会の勧告で用量を変更し、早期中止した |
| 全体の結論 | フルボキサミンは「有効な治療になりうる」 | フルボキサミンは「改善の可能性を示す」 |
便潜血検査(FIT/FOBT)で陽性になった人が、精密検査の大腸内視鏡を受けるよう促す取り組みを比べた系統的レビュー・メタ解析です。21研究・19,613人を統合すると、何もしない群で内視鏡まで受けたのは47.8%、取り組みを行った群では69.1%でした。JAMA Internal Medicineに10月5日掲載。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デザイン | 系統的レビュー・メタ解析(ランダム効果モデル、PRISMAに準拠) |
| 対象研究 | 便潜血陽性後の大腸内視鏡受診を増やす介入を比べた21研究(無作為化試験と非無作為化介入研究) |
| 人数 | 19,613人(50〜75歳、女性41.3%) |
| 検索期間 | 各データベースの開始〜2026年5月9日 |
結果:
| 取り組み | 内視鏡受診の相対リスク(95%CI) |
|---|---|
| 患者ナビゲーション(担当者が予約や準備を伴走) | 1.24(1.15〜1.33) |
| 患者へのリマインダー | 1.32(1.04〜1.67) |
| 医師へのリマインダー | 1.36(1.12〜1.65) |
| 消化器科への自動紹介 | 1.68(1.09〜2.60)※研究間のばらつきが大きい |
| 統合した受診率 | 対照 47.8% → 介入 69.1% |
10月6日(火)の日経平均は737円12銭高の70,683円98銭と続伸し、7万円台で取引を終えました。TOPIXも38.34ポイント高の4,183.56です。東証プライムでは1,153銘柄が値上がりし、値下がりは349銘柄でした。
| 指標 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均 | 70,683.98円 | +737.12円(+1.05%) |
| TOPIX | 4,183.56 | +38.34(+0.92%) |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 東証プライムの値上がり/値下がり | 1,153銘柄/349銘柄(変わらず50) |
| 売買代金 | 約7兆3,048億円 |
| 上昇した業種 | 33業種中30業種(非鉄、精密、銀行など) |
| 下落した業種 | 情報・通信、建設、空運 |
米国(10/5・月曜):ダウは90.94ドル高の51,267.90ドル、ナスダックは286.45ポイント高の27,477.31で最高値を更新しました。昨夜(10/6)のNY終値は、今朝の時点で2社で確認できていないため、数字は使いません。
10/6号でお伝えした植田日銀総裁の全国証券大会での挨拶は、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」という内容でした。そのうえで、基調的な物価上昇率を「2%程度の水準で安定させていくという観点が、これまでよりも重要になってきている」と述べています。
| 項目 | 挨拶の内容(日本銀行の公表文より) |
|---|---|
| 景気 | 「中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復」 |
| 物価 | 消費者物価の基調的な上昇率は「2%に近づいて」いる |
| 9月の決定 | 政策金利を1.25%程度に引き上げ。変更後も「緩和的な金融環境は維持される」 |
| 今後 | 「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ」。タイミングやペースは、見通しの確度やリスクを点検しながら検討 |
| 新しく強調した点 | 基調的な物価上昇率が2%を「超えて上振れていくリスク」に触れ、2%程度で安定させる観点が「これまでよりも重要になってきている」 |
| 資産形成について | 新NISAは開始から3年弱で定着。近く「こどもNISA」が開始、確定拠出年金の拠出上限も引き上げ |
今日・明日の予定:
| 日時 | 予定 |
|---|---|
| 今日 8:30 | 8月毎月勤労統計 |
| 今日 14:00 | 8月景気動向指数 |
| 今日 | 新TOPIX構成銘柄の発表 |
| 明日 3:00 | FOMC議事録(9月15〜16日開催分) |
| 明日 | さくらリポート、🩺 HPVワクチン男性接種を議論する部会(13時) |
ロシアの研究所で職員が亡くなった件で、隣の地域の首長は最初に「ペストで死亡した」と投稿しました。それがのちに「可能性がある」に書き換えられています。当局は「原因不明の肺炎」です。
第一報は、最終版ではありません。
今日の主題は、論文でそれが起きた例でした。コロナ後のだるさに効く薬を調べた試験が、いったん撤回され、書き直されて再掲載されました。効いた薬の数字は同じです。でももう1つの薬は、副作用で量を減らし、途中で中止していたことが、書き直した版で初めて要旨に載りました。結論は「効かない」から「分からない」に変わっています。
便潜血検査の「陽性」も、ある意味で第一報です。内視鏡を受けて初めて、何だったのかが分かります。それでも、陽性の人の半分近くが内視鏡まで進んでいませんでした。
このレポートでも、相場の数字は2社で確認できるまで使わないようにしています。今朝も、昨夜のNY終値は使っていません。速さより、合っていることを優先したいからです。
最初に見た情報で決めつけない。続報を待つ。今日も一日、よろしくお願いします🩺💰