現役医師 Dr. K が厳選した、健康・医療・金融の今朝のヘッドライン。
おはようございます。木曜日の朝のレポートをお届けします。
今日の隠れたテーマは 「続きを見て、はじめて分かる」。連休の週に伸びが急に鈍った埼玉のインフルエンザは、次の週に19.66まで跳ね上がりました。今日の主題は、体の中でCAR-T細胞を作る新しいがん治療です。3か月時点では4人全員に効いていました。15か月まで追うと、景色はかなり違って見えます。昨日お伝えしたロシアの件にも続報があります。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。
埼玉県が第40週(9/28〜10/4)のインフルエンザ流行状況を公表しました。定点当たり19.66(3,461人)で、前週の14.17から+5.49と再び大きく増えました。流行注意報は発令中です。厚生労働省の全国集計は明日10月9日(金)に公表予定です。
| 埼玉県 | 第36週 | 第37週 | 第38週 | 第39週(連休あり) | 第40週 |
|---|---|---|---|---|---|
| 定点当たり報告数 | 4.57 | 9.10 | 13.56 | 14.17 | 19.66 |
| 前週からの増え方 | — | +4.53 | +4.46 | +0.61 | +5.49 |
| 報告数 | — | — | 2,333人 | 2,465人 | 3,461人 |
10/7号でお伝えしたロシアのペスト対策研究所の職員死亡について、ロシアの衛生当局(消費者権利保護・福祉監督庁)が続報を出しました。接触者の間でペストの発症例は確認されておらず、地元病院で隔離された人の約60%がすでに解除されたとしています。
| 項目 | 当局の発表(ロイター報道) |
|---|---|
| ペストの発症例 | 確認されていない |
| 接触者 | 毎日の検査で、感染症に関連する健康状態の変化がみられた人はいなかった |
| 研究所の職員 | 過去10日間に感染症の報告はなし |
| 亡くなった女性の検査 | 体内から「業務に関連する微生物は見つからなかった」 |
| 隔離 | 地元病院で隔離された人の約60%が解除 |
再発・難治性の多発性骨髄腫に対する、新しい「体内(in vivo)CAR-T療法」の長期追跡結果です。通常のCAR-Tは患者さんの血液からT細胞を取り出し、体の外で加工して戻します。この治療は注射した薬(ESO-T01)が体内でCAR-T細胞を作るため、採血による細胞採取(アフェレーシス)や、事前の抗がん剤(リンパ球除去)が要りません。Nature Medicineに10月6日掲載。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 薬剤 | ESO-T01(BCMAを標的とする体内CAR-T)、NCT06691685 |
| 対象 | 再発・難治性の多発性骨髄腫 4人 |
| 特徴 | アフェレーシスもリンパ球除去もなし |
| 主要評価 | 安全性・忍容性 |
| 追跡 | 最長 15か月 |
| 研究国 | 中国(武漢) |
初回報告(最長3か月)と、今回の長期追跡(最長15か月):
| 項目 | 初回報告(〜3か月) | 今回(〜15か月) |
|---|---|---|
| 奏効率 | 100%(厳格な完全奏効2人、部分奏効2人) | — |
| 奏効が続いた人 | — | 1人(15か月間、厳格な完全奏効を維持) |
| 無増悪生存期間(中央値) | — | 4.0か月(範囲3.0〜15.0) |
| 再発・進行 | — | 3人(全員が骨髄の外の病変を伴う) |
| 死亡 | — | 3人(進行後、救済治療で全生存は投与後5.5〜10.9か月) |
| 副作用 | 全員にサイトカイン放出症候群(グレード1〜3)、全員にグレード3以上の血球減少、1人に神経毒性(グレード1) | 初回報告以降、新たな重要な有害事象はなし。免疫原性・遺伝子組み込みに関連する毒性もなし |
118か国・902の調査に参加した約610万人の、自己申告による痛みのデータを統一し、年齢ごとの「痛みの基準曲線」を作った研究です。痛みの有病率は部位によって顔の約2%から腰の約40%まで幅があり、11部位すべてで女性のほうが多く、55歳までに最も急に増えることが分かりました。Nature Medicineに10月5日掲載。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ | 118か国・902の地域住民調査、6,125,459人の自己申告データを統合 |
| 痛みの有病率 | 顔の痛み 約2% 〜 腰痛 約40% |
| 男女差 | 11部位すべてで女性が多い(リスク比 1.08〜1.83) |
| 年齢 | 55歳までに最も急に増える |
| 国の豊かさとの関係 | 人間開発指数(HDI)が最も低い国の高齢者は、最も高い国より体の痛みが30.6ポイント多い(95%CI 26.9〜34.3)。高齢での腰痛は2倍近く |
| 変えられる要因 | 痛みの負担の18.3%が、喫煙・肥満・低所得の3つで説明できる(地域により12.6〜27.1%) |
| 公開 | 自分たちのデータを世界の基準と比べられる無料のプラットフォームを公開 |
10月7日(水)の日経平均は648円27銭安の70,035円71銭と3日ぶりに反落しました。TOPIXも29.45ポイント安の4,154.11です。同じ日、JPX総研はTOPIXの新しいルールによる初めての定期入れ替えの結果を発表しました。
| 指標 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均 | 70,035.71円 | −648.27円(−0.92%) |
| TOPIX | 4,154.11 | −29.45(−0.70%) |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 東証プライムの値上がり/値下がり | 526銘柄/972銘柄(変わらず54) |
| 売買代金 | 約7兆6,713億円 |
| 下落が目立った業種 | 銀行、非鉄、証券 |
| 上昇した業種 | 電気・ガス、ゴム、情報・通信 |
TOPIXの入れ替え(JPX総研が10月7日に公表):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 新規採用 | 35銘柄(スタンダード・グロース市場からも採用) |
| 移行措置銘柄(基準を満たさず、段階的にウエイトを下げる) | 683銘柄 |
| 10月30日時点の構成銘柄数 | 1,669銘柄(移行措置銘柄を含む) |
| 実施日 | 2026年10月30日 |
| ウエイトの下げ方 | 四半期ごとに8段階で下げていく(JPX総研の説明)。2027年10月に再評価があり、そこで基準を満たせば引き下げは止まる |
米国(10/6・火曜):ダウは253.38ドル高の51,521.28ドルで4日続伸、ナスダックは122.48ポイント高の27,599.79で2日連続の最高値でした。昨夜(10/7)は下落したと速報されていますが、終値は今朝の時点で2社で確認できていないため、数字は使いません。
10/7号でお伝えしたFOMC議事録(9月15〜16日開催分)が公表されました。利上げは全員の支持で決まり、大半の参加者が「年内にもう一度の利上げが適切になりそう」と判断していました。一方、国内では8月の実質賃金が前年同月比1.5%増え、8か月連続のプラスになりました。
FOMC議事録の要点(FRBの公表文より):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決定 | 全参加者が0.25%の利上げ(3.75〜4.00%)を支持 |
| 当時の景気の見方 | インフレは高止まり、労働市場は「ほぼ完全雇用で、強まる兆しもある」、経済活動は堅調に拡大 |
| リスク | ほぼ全員が、インフレのリスクは上振れ方向、労働市場のリスクは減って「おおむね均衡」と評価 |
| 今後 | 大半の参加者が、年内にもう一度の利上げが適切になる可能性が高いと評価 |
| 但し書き | 各会合に予断を持たずに臨み、今後の決定は入ってくる情報次第 |
8月の毎月勤労統計(速報、10月7日発表):
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 実質賃金 | 前年同月比 +1.5%、8か月連続のプラス(12か月連続だった2016年2月〜17年1月以来、約10年ぶり) |
| 名目賃金(現金給与総額) | 31万1,364円(+3.8%)、7か月連続で3%以上の伸び(34年5か月ぶり) |
| 所定内給与(基本給) | 27万7,861円(+3.8%) |
| 計算に使う物価の伸び | +2.2% |
| 6・7月の実質賃金 | プラス幅は2%台 → 8月は1.5%に縮小 |
今日・明日の予定:
| 日時 | 予定 |
|---|---|
| 今日 8:50 | 8月国際収支 |
| 今日 | さくらリポート(日銀地域経済報告)、9月景気ウォッチャー調査(14:00)、30年国債入札 |
| 今日 13:00 | 🩺 HPVワクチン男性接種を議論する予防接種基本方針部会 |
| 明日 | オプションSQ、8月家計調査、🩺 インフル第40週の全国集計 |
体の中でCAR-T細胞を作る新しい治療は、最初の報告で「4人全員に効いた」と伝えられました。3か月時点の数字です。
15か月まで追うと、効果が続いたのは1人でした。無増悪生存期間の中央値は4.0か月。深く効くことと、長く効くことは、別の話でした。
埼玉のインフルエンザも同じです。連休の週は+0.61で、「頭打ちか」と見えました。次の週は+5.49です。続きを見て、はじめて分かりました。ただし、その+5.49にも連休明けのまとめ受診が混ざっているかもしれません。2週をならして見る、というのも続きの読み方です。
アメリカの中央銀行は、9月の会合で労働市場を「強まる兆しもある」と見ていました。その後の雇用統計は弱いものでした。その時点で手元にあった情報で決めるしかないのは、診療も同じです。大事なのは、続きが出たときに見直せるかどうかです。
今日は13時からHPVワクチンの部会、明日はインフルエンザの全国集計です。どちらも、続きは金曜日の号で。今日も一日、よろしくお願いします🩺💰