おはようございます。3連休明け、火曜日の朝のレポートをお届けします。
今日の隠れたテーマは 「見かけを外すと、残るもの」。今日の主題は、妊娠中にインフルエンザにかかった母親の子どもに、発達や精神の病気が増えるのかを、韓国と日本のデータで調べた研究です。全体で比べると、わずかに増えているように見えました。ところが同じ母親から生まれたきょうだいどうしで比べると、差は消えました。インフルエンザの全国集計も、連休の影響という「見かけ」を外すと、流行が続いていることが分かりました。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。
🩺 健康・医療ニュース
1.【答え合わせ】インフルエンザ第40週の全国は11.35 — 先週の「減少」は連休の見かけだった
10月9日に公表された第40週(9/28〜10/4)の全国の定点当たり報告数は11.35で、連休を含んだ第39週の7.17から大きく増えました。連休前の第38週(8.48)も上回っています。昨年の同じ時期は1.56で、今年は約7倍です。
| 見るところ | 第38週 | 第39週(連休あり) | 第40週 |
| 全国 | 8.48 | 7.17 | 11.35 |
| 東京 | 15.21 | 9.51 | 15.87 |
| 神奈川 | 14.71 | 8.59 | 18.51 |
| 千葉 | 14.36 | 9.76 | 18.72 |
| 埼玉 | 13.56 | 14.17 | 19.66 |
| 沖縄 | 26.27 | 42.50 | 37.07 |
| 昨年同期(全国) | 0.80 | 1.04 | 1.56 |
- 10/2号から追ってきた「第39週の減少は、頭打ちか、受診控えか」の答えは、受診控えでした。
- 第39週と第40週をならすと9.26で、連休前の8.48を上回ります。流行は止まっていなかったと読むのが自然です。
- 首都圏の1都3県はそろって第38週を超えました。一方、沖縄は42.50から37.07へ下がりました。早く流行が始まった地域から、ピークを越え始めている可能性があります(1週だけでは断定できません)。
- 第40週には連休明けのまとめ受診も混ざりうるため、次の第41週で増え方が落ち着くかを確かめます。
- 次回(第41週)の公表は10月16日(金)予定です(今回のPDFに明記)。
- 一般の方へ:先週「減った」と伝えられたインフルエンザは、連休で病院が休みだった影響でした。実際には増え続けています。
- 首都圏はとくに多く、昨年の同じ時期の約7倍です。手洗いや、体調が悪いときに無理をしないことを続けてください。
2. 新型コロナは第40週1.51 — こちらは連休明けも「戻らなかった」
同じ10月9日に公表された新型コロナの第40週の全国の定点当たり報告数は1.51でした。連休を含む第39週の1.25からは少し増えましたが、連休前の第38週(2.65)には戻っていません。昨年の同じ時期(4.82)の約3分の1です。
| 週 | 第36週 | 第37週 | 第38週 | 第39週(連休あり) | 第40週 |
| 新型コロナ(全国) | 2.08 | 2.44 | 2.65 | 1.25 | 1.51 |
| 昨年同期 | 8.12 | 8.43 | 6.93 | 5.87 | 4.82 |
| (参考)インフルエンザ | 3.29 | 5.54 | 8.48 | 7.17 | 11.35 |
- 同じ連休でも、戻ったものと戻らなかったものがあります。
- 第39週と第40週をならすと1.38で、第38週の2.65を大きく下回ります。インフルエンザと違い、新型コロナは連休の影響を外しても減っていると読めます。
- 発熱外来では、今はインフルエンザの比重が大きい時期です。ただし両方の検査を同時にする運用や、高齢者の重症化リスクは変わりません。
- 第41週の公表も10月16日(金)予定です。
- 一般の方へ:新型コロナは、昨年の同じ時期の約3分の1と少ない状態です。
- 熱が出たときに多いのは、今はインフルエンザのほうです。どちらか自己判断せず、つらいときは受診してください。
📚 注目論文・エビデンス
1.【今日の主題】妊娠中のインフルエンザと子どもの発達・精神の病気 — 全体では1.1倍、きょうだいで比べると差は消えた(韓国・日本の約275万組)
妊娠中にインフルエンザと診断された母親の子どもに、ADHD・自閉スペクトラム症などの発達や精神の病気が増えるのかを、韓国と日本の保険データで調べたコホート研究です。全体で比べると、リスクは約1.1倍と、わずかに高く見えました。ところが、同じ母親から生まれた、妊娠中の感染があった子となかった子(きょうだい)で比べると、統計的な差はなくなりました。JAMA Network Openに掲載(2026年10月号)。
| 項目 | 内容 |
| デザイン | 2か国のコホート研究(韓国=発見、日本=再現) |
| 韓国 | 国民健康保険公団の出生コホート 2,564,435組(妊娠中の感染 35,973組=1.4%) |
| 日本 | JMDC(健康保険組合のデータ)の出生コホート 181,681組(妊娠中の感染 11,198組=6.2%) |
| 対象 | 2010〜2017年生まれの子ども、2023年末まで追跡 |
| 曝露 | 妊娠中に初めて記録されたインフルエンザの診断 |
| 主要評価 | 子どもの発達・精神の病気の診断(ADHD、自閉スペクトラム症、知的障害、強迫症、重い精神疾患) |
| 解析 | 傾向スコアによる重み付け(IPTW)、きょうだい比較 |
| 利益相反 | なし(要旨の記載) |
結果(調整ハザード比、95%CI):
| 比べ方 | 韓国 | 日本 |
| 全体での比較 | 1.09(1.04〜1.14) | 1.10(1.02〜1.19) |
| きょうだい比較 | 0.98(0.89〜1.09) 33,191組 | 1.04(0.88〜1.22) 7,842組 |
- 「全体では関連あり、きょうだいでは関連なし」は、家庭の要因が見かけの関連を作っていた可能性を示します。
- きょうだいは、遺伝や家庭環境、親の受診のしかたなどを多く共有しています。そのきょうだいどうしで差が消えたことから、著者らは全体で見えた関連は、家族の要因で説明できる可能性があると結論しています。
- 全体の比較では、韓国と日本の2か国で同じ向き・同じ大きさ(1.09と1.10)でした。再現されたからといって、因果関係とは限らない、という好例です。
- 妊娠中にインフルエンザにかかった方から、お子さんへの影響を聞かれたときに、「大きなデータで調べても、きょうだいで比べると差は見られなかった」と伝えられる材料になります。
- 限界:曝露は保険の診断記録で、受診しなかった感染は数えられていません。日本のJMDCは会社員とその家族が中心で、日本全体を代表するデータではありません。きょうだい比較は対象が少なく、信頼区間が広くなっています(日本は0.88〜1.22)。また、この研究は妊娠中のワクチンの効果を調べたものではありません。
- 一般の方へ:妊娠中にインフルエンザにかかっても、それだけで子どもの発達の病気が増えるとは言えない、という結果です。
- 最初は「少し増える」ように見えましたが、きょうだいどうしで比べると差はなくなりました。
- ただし、妊娠中のインフルエンザは、お母さん自身が重くなりやすいことが知られています。予防やワクチンについては、かかりつけの産婦人科医に相談してください。
2. NAD前駆体「ニコチンアミドリボシド」は早期パーキンソン病を改善せず、偽薬より悪化 — 第3相試験NOPARK(JAMA)
NAD(細胞のエネルギー代謝に関わる物質)の前駆体であるニコチンアミドリボシド(NR)を、早期のパーキンソン病の患者さんに1年間飲んでもらった、ノルウェーの第3相無作為化試験です。動物実験や初期の研究では期待されていましたが、症状は改善せず、むしろ偽薬(プラセボ)のほうが良い結果でした。JAMAに10月8日掲載。
| 項目 | 内容 |
| デザイン | 第3相・二重盲検・プラセボ対照の無作為化試験(ノルウェー11施設) |
| 対象 | 診断から2年以内の早期パーキンソン病 410人(解析393人、平均65.6歳) |
| 介入 | NR 500mgを1日2回 vs プラセボ、52週間 |
| 主要評価 | MDS-UPDRS(パート1〜3の合計、点数が高いほど重い)の52週の変化 |
結果:
| 評価項目 | NR | プラセボ | 差(95%CI) |
| MDS-UPDRS合計の変化 | +2.45点(悪化) | −0.27点 | 2.72点(0.47〜4.98)、プラセボが良い(P=0.02) |
| 非運動症状(NMSS) | — | — | 4.22点悪化(1.07〜7.37) |
| 重い有害事象 | 8.3% | 14.1% | — |
- 「理屈では効きそう」と「実際に効く」は、別物でした。
- NRは、NADを補うことで神経細胞のエネルギー代謝を助けるという理屈で、病気の進行を遅らせる薬の候補とされていました。初期の研究でも期待が持たれていました。しかし1年間の大規模な試験では効果がなく、主要評価も非運動症状も、偽薬より悪い方向でした。
- 注目すべきは、研究者の一部がNRをパーキンソン病に使う特許を持ち、NRを扱う企業にライセンスしている(要旨の利益相反の記載)にもかかわらず、否定的な結果をそのまま報告している点です。
- 限界:差の2.72点は、悪化と判断する目安(5.2点)より小さく、患者さんが実感できるほどの悪化かは分かりません。重い有害事象はむしろNR群のほうが少なく、悪化の結果が偶然の可能性も残ります。用量は1つ、期間は1年、対象は早期の患者さんのみです。資金の出どころは要旨に記載がありません。
- 一般の方へ:「若返り」などで話題のNAD関連のサプリメントの一つ、ニコチンアミドリボシドは、パーキンソン病の進行を遅らせませんでした。
- 1年間飲んだ人のほうが、飲まなかった人より、わずかに症状が進んでいました。
- 今回調べたのはNRで、NMNなど別の成分の結果ではありません。病気の治療としてサプリメントを使うときは、主治医に相談してください。
💰 金融・税制ニュース
1.【答え合わせ】SQの金曜日、日経平均は「3日続落」でも下げは11円 — 1週間では+721円
10月9日(金)の日経平均は11円19銭安の69,030円92銭で、小幅ながら3日続落でした。朝方は前日の米ハイテク株安を受けて下げ幅が800円を超えましたが、押し目買いで戻し、TOPIXは13.35ポイント高の4,104.81(+0.33%)と上昇しています。
| 指標 | 10/9 終値 | 前日比 |
| 日経平均 | 69,030.92円 | −11.19円(−0.02%) |
| TOPIX | 4,104.81 | +13.35(+0.33%) |
| 1週間で見ると | 日経平均 |
| 前の週末(10/2)の終値 | 68,309.46円 |
| 週の初め(10/5)の終値 | 69,946.86円 |
| 週末(10/9)の終値 | 69,030.92円(前の週末から+721.46円) |
米国(10/9・金曜):ダウは423.31ドル高の51,654.95ドルと続伸、ナスダックは172.83ポイント高の27,366.17と3日ぶりに反発しました。前日に売られたAI関連株が買い戻され、米長期金利の上昇も一服しました。
昨夜(10/12・月曜)の米国:東京市場は祝日で休場、米国は債券市場が休場で株式は取引がありました。終値は今朝の時点で2社で確認できていないため、数字は使いません。取引時間中は、ダウが上昇、ナスダックは下落で推移していました。
- 10/9号で「SQの日は指数が振れやすい」とお伝えしました。実際に朝は800円以上下げ、引けは11円安でした。終値だけ見ると「3日続落」でも、日中は大きく振れて、ほぼ元に戻った一日です。
- 「3日続落」「7万円割れ」という見出しが続いた週でしたが、1週間で見ると日経平均は+721円です。週の初めに大きく上げた分を、残りの日で少しずつ返した形でした。
- ※相場は日々変動します。本レポートは今後の値動きを断定するものではありません。
- 一般の方へ:「3日続けて下がった」というニュースでも、1週間で見ると株価は上がっていました。
- 毎日の見出しより、週や月の単位で見ると、落ち着いて判断できます。
2. 今週の焦点:14日の米CPI、16日の日銀総裁の挨拶 — 4営業日の短い週
今週の東京市場は火曜から金曜までの4営業日です。最大の焦点は14日(水)の米国9月の消費者物価指数(CPI)で、コア指数は前年比2.5%と、8月から伸びが高まると予想されています。国内では今日の企業物価指数、16日(金)の植田総裁の挨拶(内田副総裁が代読)があります。
| 日 | 日本 | 海外 |
| 13日(火) | 9月の国内企業物価指数 | IMF世界経済見通し、米中古住宅販売 |
| 14日(水) | — | 米9月CPI、米ベージュブック(地区連銀経済報告) |
| 15日(木) | 8月の機械受注、小枝審議委員の挨拶(熊本) | 米9月の小売売上高・卸売物価指数(PPI) |
| 16日(金) | 植田総裁の挨拶(内田副総裁が代読、全国信用組合大会)、🩺 インフル・コロナ第41週の全国集計 | — |
- 米CPIの伸びが予想より高いと、米国の金利が下がりにくいという見方が強まり、株価や円相場が動きやすくなります。米国株の積立をしている方は、14日の夜から15日の朝にかけての値動きが大きくなりうると知っておくと、慌てずに済みます。
- 日銀は9月に利上げしたばかりです。16日の挨拶で次の利上げへの考え方がどう語られるかは、変動金利の住宅ローンに関わります。
- 今週は、3連休の間に海外で起きたことを、火曜の東京市場がまとめて織り込む日から始まります。今日の値動きだけで、週の方向を決めつけないことです。
- ※相場は日々変動します。本レポートは今後の値動きを断定するものではありません。
- 一般の方へ:今週は、アメリカの物価の数字(14日)が一番の注目です。
- 物価の伸びが高いと、金利が下がりにくくなり、株価や為替が動きやすくなります。金曜日には日銀総裁の挨拶もあります。
📌 免責事項:本Morning Briefは情報提供を目的とした要約記事であり、医学的・投資的判断を行うものではありません。引用元の一次情報を必ずご確認ください。診療判断・投資判断は各専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。
先週、インフルエンザの数字が「減った」と出たとき、私たちは連休で病院が休みだったからでは、と考えていました。今日の答え合わせで、その通りだったことが分かりました。連休の影響を外すと、流行は続いていました。
同じ連休でも、新型コロナのほうは戻りませんでした。同じ「見かけ」を外しても、残るものは病気によって違います。
今日の主題の論文も、同じ構図です。妊娠中にインフルエンザにかかった母親の子どもでは、発達の病気が約1.1倍に見えました。でも、きょうだいどうしで比べると、差は消えました。見えていた関連の多くは、家庭が共有しているものが作っていた可能性があります。
ニコチンアミドリボシドは、理屈では効きそうな薬でした。1年間の試験で残ったのは、期待とは逆の結果でした。
株も、「3日続落」という見出しの週に、1週間では721円上がっていました。
数字を見たら、「何が混ざっているか」を一つ外してみる。残ったものが、本当に起きていることです。
3連休明けの火曜日です。短い週ですが、よい一週間を🩺💰