現役医師 Dr. K が厳選した、健康・医療・金融の今朝のヘッドライン。
おはようございます。水曜日の朝のレポートをお届けします。
今日の隠れたテーマは 「全体を動かしているのは、一部かもしれない」。昨日の日経平均は1,253円安でした。ところが東証プライムでは約73%の銘柄が上がっていました。大きく下げたのは、半導体を中心とする一部の値がさ株です。今日の主題は、新しい抗がん剤について「分かっていないこと」を一つ伝えるだけで、使いたいと答える人が約10ポイント減ったという無作為化試験です。全体の数字を見たら、それを動かしている「一部」を探してみる。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。
沖縄県は10月9日、第40週(9/28〜10/4)のインフルエンザの定点当たり報告数が37.07人で、前週の42.50人から少し減ったものの依然として高い水準のため、警報が2週継続になったと発表しました。あわせて、県内の一部の救急病院で、外来診療の遅れ(待ち時間が長い)や患者の受け入れ制限が起きているとして、「適正受診」への協力を呼びかけています。
| 沖縄県 | 第39週 | 第40週 |
|---|---|---|
| 定点当たり報告数 | 42.50 | 37.07(定点44か所・報告1,631人) |
| 警報 | 発令 | 2週継続 |
| (参考)全国 | 7.17 | 11.35 |
グーグルが開発した会話型の診断AI「AMIE」が、実際の外来(米国の急ぎのプライマリケア受診)の前に患者と会話し、その記録を医師に渡すという試みの実現可能性を調べた研究です。98人が最後まで参加し、あらかじめ決めた基準で会話を止める必要があった例はゼロでした。一方で、監視役の医師が事実と異なる内容(いわゆるハルシネーション)を1件見つけ、5件で臨床情報を補っていました。Lancetに10月8日掲載。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デザイン | 前向き・単施設・単群の実現可能性研究(比較群なし) |
| 対象 | 18歳以上、英語を話し、1つの症状で急ぎの受診を予約した患者。登録114人、完了98人(2025年4〜11月) |
| 方法 | 受診の最大5日前にAIと会話。全会話を医師が監視し、基準に当たれば介入。記録と要約を受診前に担当医へ |
| 資金 | Alphabet(グーグルの親会社)。著者の多くがグーグルの社員 |
結果:
| 評価 | 結果 |
|---|---|
| 安全のための会話の中断 | 0件 |
| 監視医が見つけたハルシネーション | 1件 |
| 監視医が臨床情報を補った会話 | 5件 |
| 評価者による会話の質 | 17項目で87〜100%が「良い」 |
| 担当医の評価(記録を事前に読んだ44件) | 受診の準備に役立った 33件、自分の診療を変えたかもしれない 25件 |
新しい抗がん剤は、効果やリスクが十分に分かっていない段階で承認されることが少なくありません。その「分かっていないこと(不確実性)」を、分かりやすい言葉で一般の人に伝えると、薬を使うかどうかの判断が変わるのかを調べた、2つの無作為化試験です。不確実性を1つ知るだけで、「使う」と答える人が平均10.1ポイント減りました。伝える不確実性の数を増やすほど、減り方は大きくなりました。JAMA Internal Medicineに10月12日掲載。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デザイン | オンラインの無作為化試験2本(仮想の判断を調べる) |
| 対象 | 年齢・性別・学歴・収入・人種を国勢調査に合わせた米国の成人 6,272人(2025年5〜7月) |
| 試験1 | 5種類の不確実性のうち1つを伝える:①対照群のない試験で承認 ②人種・民族が偏った対象 ③短い試験期間 ④代わりの指標(代理エンドポイント)で評価 ⑤患者が実感できる改善があるか不明 |
| 試験2 | 不確実性を1〜4個伝える群と、伝えない対照群 |
| 主要評価 | 「その薬を使う」という仮想の判断の変化 |
結果:
| 伝えた内容 | 「使う」と答えた人の変化(95%CI) |
|---|---|
| 不確実性を1つ(全体) | −10.1ポイント(−11.7〜−8.5) |
| 「患者が改善を実感できるか不明」 | −14.1ポイント(−17.9〜−10.4) |
| 「自分と同じ人種・民族で調べられていない」 | −12.8ポイント(−16.4〜−9.2) |
| 不確実性の数を増やす(試験2) | 1つ増えるごとに減少(用量反応) |
- 不確実性を知ると、薬が効くという印象と、情報やFDA(米国の承認機関)への信頼は下がりましたが、不安(心配)は増えませんでした。
アルコール離脱症候群で入院した患者さんに、入院当日からフェノバルビタールを使った場合と、作用の長いベンゾジアゼピン系のジアゼパムを使った場合を、米国754病院のデータで比べた研究です。無作為化試験をまねた解析(標的試験エミュレーション)で、入院日数も人工呼吸の必要性も差はありませんでした。唯一違ったのは、医師の許可を待たずに自分で退院した割合で、ジアゼパムのほうが多くなっていました。JAMA Internal Medicineに10月12日掲載。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デザイン | 観察データによる比較効果研究(標的試験エミュレーション、機械学習を使った調整) |
| データ | Premier Healthcare Database(2022年10月〜2024年8月、米国754の急性期病院) |
| 対象 | アルコール離脱症候群を主病名に入院し、入院当日に開始した成人 24,643人(年齢中央値45歳、男性75.1%) |
| 比較 | フェノバルビタール 11,919人 vs ジアゼパム 12,724人 |
結果(調整後):
| 評価項目 | フェノバルビタール | ジアゼパム | 差(95%CI) |
|---|---|---|---|
| 入院日数(主要) | 4.1日 | 4.3日 | −0.21日(−0.42〜0.00) |
| 侵襲的人工呼吸(安全性) | 3.1% | 2.7% | 0.4%(−0.7〜1.4) |
| 自己退院 | 9.5% | 12.6% | −3.1%(−4.9〜−1.3) |
3連休明けの10月13日(火)、日経平均は1,253円40銭安の67,777円52銭で、4日続落でした。一時は2,000円近く下げています。ところが東証プライム市場では、値上がりが約1,140銘柄、値下がりは約380銘柄で、全体の約73%が上がっていました。東証33業種のうち26業種が上昇し、TOPIXは小幅に続伸しています。
| 指標 | 10/13 |
|---|---|
| 日経平均 | 67,777.52円(−1,253.40円、−1.82%) 4日続落 |
| TOPIX | 小幅に続伸 |
| 東証プライム | 値上がり 約1,140/値下がり 約380(約73%が上昇) |
| 東証33業種 | 上昇26/下落7 |
なぜ指数だけが大きく下げたのか:日経平均は、株価の高い銘柄の動きが大きく効く仕組みです。この日は、東京エレクトロン、ソフトバンクグループ、アドバンテスト、キオクシア、イビデンなど、半導体・AI関連の値がさ株が大きく下げました(前日の米国で半導体株が売られ、韓国株も急落)。フィスコの集計では、東京エレクトロン1銘柄で日経平均を約450円押し下げています。一方、上昇の側ではファーストリテイリング1銘柄で約160円の押し上げでした。
米国:
| 日付 | ダウ | ナスダック |
|---|---|---|
| 10/12(月) | 51,850.55ドル(+195.60) 3日続伸 | 27,245.90(−120.27) |
| 10/13(火) | 51,670.10ドル(−180.45) 4日ぶり反落 | 27,204.38(約−42) 続落 |
- 10/13号では、10/12の米国の終値を「2社で確認できていないため使わない」としていました。今日確認できた終値は、ダウは上昇、ナスダックは下落で、取引時間中の動きとしてお伝えした方向どおりでした。
- 10/13の米国は、メモリー半導体株の下げと、原油高が重荷でした。終盤にNY連銀のウィリアムズ総裁が「現時点で来年の利上げは必要ない」との考えを示し、下げ渋っています。
- ⚠️ 数字の扱い:プライム市場の値上がり・値下がりの比率は、1社の記事で逆(値上がり24.4%・値下がり73.4%)に書かれていました。みんかぶ(値上がり1,140・値下がり380)と株探の業種ランキング(値上がり1,137・値下がり378)の2社が一致し、33業種のうち26業種上昇・TOPIX上昇とも整合するため、こちらを採用しました。TOPIXの終値の数字は1社でしか確認できなかったため、「小幅に続伸」とだけ書いています。原油価格は記事によって数字が違ったため使いません。
今夜(日本時間21時30分)、米国の9月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。8月は総合が前年比3.4%、食品とエネルギーを除くコアが2.4%でした。9月は、総合はガソリン価格の上昇で伸びが高まる一方、コアは2.4〜2.5%程度と、8月並みかわずかな加速にとどまると予想されています。
| 8月(結果) | 9月(予想) | |
|---|---|---|
| 総合(前年比) | 3.4% | 伸びが高まる見込み(主にガソリン価格) |
| コア(前年比) | 2.4% | 2.4〜2.5%程度(予想は媒体によって分かれる) |
- なぜ重要(医師への影響):
- ⚠️ 数字の扱い:コアの予想は、ザイFX!が2.5%、Admiral Marketsが2.4%前後と分かれていたため、「2.4〜2.5%程度」と幅で書いています。総合の予想の具体的な数字は、2社で一致を確認できなかったため使いません。
昨日、日経平均は1,253円下がりました。でも、東証プライムの4分の3近い銘柄は、上がっていました。指数を大きく動かしたのは、株価の高い一部の銘柄でした。
沖縄のインフルエンザは、県全体の数字が少し下がりました。それでも、一部の救急病院には患者さんが集まり、受け入れを制限するところまで来ています。
AIの問診は、「中断ゼロ」という全体の結果の陰で、医師が6件の手直しをしていました。アルコール離脱の2つの薬は、全体ではほぼ同じで、違ったのは自己退院という一つの項目だけでした。
今日の主題の論文では、新薬の「分かっていないこと」を一つ伝えるだけで、使いたいと答える人が10ポイント減りました。患者さんの判断を動かしていたのは、承認という大きな事実より、小さな但し書きでした。
今夜の米国の物価も、全体の数字を押し上げるのはガソリンという一部です。
全体の数字を見たら、それを動かしている一部はどこかを探してみる。外来で、検査値が一つ大きく外れているときに、まずその一つを確かめるのと同じです。
週の真ん中、水曜日です。今日もよろしくお願いします🩺💰