📰 Dr. K's MORNING BRIEF
2026年9月29日(火)

増やしていいものと、
増えてしまったもの。

現役医師 Dr. K が厳選した、健康・医療・金融の今朝のヘッドライン。

おはようございます。火曜日の朝のレポートをお届けします。

今日の隠れたテーマは 「増やしていいものと、増えてしまったもの」。今日の主題は、心不全の両心室ペーシングで「いちばん遅れて動く場所」を狙ってリードを置いた試験です。狙いは当たりました。狙った場所は平均9ミリ秒遅く、ちゃんとそこに置けています。それでも死亡と心不全入院は変わらず、リード関連の合併症だけが増えました。もう1本は、230万人のデータから「薬の副作用に、薬を足してしまう」型を24通り洗い出した研究です。一方で、増やすべきものもあります。今季のインフルワクチンは約5,190万回分の見込みで、10月2日までに6割超が出荷される計画です。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。

🩺 健康・医療ニュース

1.【答え合わせ】インフルワクチンは今季 約5,190万回分 — 10月2日までに6割超が出る計画

9/10号で「医療機関への着荷は10月ごろの見込み」とお伝えしました。その答え合わせです。今季(2026/27シーズン)の供給見込みは約5,190万回分で、10月2日までに約3,147万回分(総量の6割超)が出荷される計画です。

項目内容
今季の供給見込み約5,190万回分
過去3年の平均使用量約4,689万回分(今季はこれを上回る)
10月2日までの出荷計画約3,147万回分=総量の6割超
新型コロナワクチン約702万回分
算定方法インフルHAワクチンは0.5mL/回、経鼻弱毒生ワクチンは0.2mL/回で換算した合算
公表の場8月26日の厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会
厚労省の供給通知2026年9月16日発出

2.【今日14時】第38週の全国集計が出ます — 見るのは「伸びが続いているか」

今日9月29日(火)、厚生労働省から第38週(9/14〜20)の全国集計が公表されます。昨日の号でお伝えしたとおり、公表が金曜からずれたのは5連休のためです。

第36週第37週第38週(今日公表)
全国3.295.54(20,697人)?
沖縄10.3416.61?
東京5.469.53?
埼玉(県が先に公表済み)4.579.1013.56(2,333人)

📚 注目論文・エビデンス

1.【今日の主題】狙いは当たった。結果は変わらず、合併症だけ増えた — DANISH-CRT

心不全の両心室ペーシングで、左室リードを「いちばん遅れて電気が届く場所」に狙って置いても、死亡と心不全入院は減りませんでした。狙い自体は当たっていました。Lancetに9月26日オンライン掲載。

項目内容
試験名DANISH-CRT(NCT03280862、終了済み)
デザイン全国・無作為化・二重盲検・優越性試験
実施施設デバイス植込みを行うデンマークの5大学センターすべて
登録期間2018年3月20日〜2024年6月3日
対象心不全+幅広いQRS、ガイドラインに沿った薬物治療下で両心室ペーシングの適応
症例数1,001人(女性255人・男性746人)/誤登録1人を除き1,000人で解析
盲検患者と手術室スタッフ以外の全研究者を盲検化
追跡中央値 45.8か月(IQR 28.5〜65.7)、2026年2月27日に完了
資金ノボノルディスク財団、デンマーク心臓財団ほか(企業の製品販売者ではない)

介入と結果:

標的留置(最遅延部位)従来留置(後側壁・非心尖部)
無作為化499人502人
解析対象(修正ITT)499人501人(誤登録1人を除外)
狙いは当たったかリード位置の電気的活性化は平均9ミリ秒遅い(95%CI 5〜13)—
主要評価(死亡または心不全による予定外入院)139/499人(28%)128/501人(26%)
ハザード比1.10(95%CI 0.86〜1.39)/p=0.45—
合併症全体71人(14%)64人(13%)
リード関連の合併症標的留置群で多かった—
手技関連死1件0件

2. 薬の副作用に、薬を足してしまう — 230万人から洗い出された24の型

「処方カスケード」——ある薬の副作用を新しい病気と読み違えて、別の薬を足してしまう現象です。カナダ・オンタリオ州の229万7,942人のデータから、優先して対策すべき24の型が特定されました。BMJ掲載。

項目内容
デザイン人口レベルの後ろ向きコホート研究(行政医療データ)
対象オンタリオ州の地域在住高齢者 2,297,942人(66歳以上、女性54.3%)、2022年1月1日時点
検討した型2025年の国際専門家デルファイ合意で挙げられた65の処方カスケード
解析手法処方順序対称性分析による調整順序比(1より大きいほど「先の薬→後の薬」の順に起きやすい)
優先の基準開始薬の人口プレバレンス5%以上/カスケード発生率1%以上/調整順序比1超(いずれも95%CI下限が基準超)
結果65のうち24(37%)が3基準すべてを満たした
開始薬として最多心血管系の薬(薬剤クラスのプレバレンス 19.0〜65.9%)

発生率が高かったカスケード:

順先に出た薬 → 後から足された薬発生率(95%CI)
1鉄剤 → 下剤11.9%(11.7〜12.1)
2スタチン → 鎮痛薬10.9%(10.7〜11)
3コリンエステラーゼ阻害薬 → 睡眠薬10.3%(9.9〜10.7)

時間的な結びつきが強かったカスケード(調整順序比):

順先に出た薬 → 後から足された薬調整順序比(95%CI)
1ステロイド → 抗精神病薬2.55(2.47〜2.64)
2下剤 → 止瀉薬2.53(2.43〜2.65)
3コリンエステラーゼ阻害薬 → 制吐薬2.24(1.90〜2.65)

💰 金融・税制ニュース

1. 一時67,000円台を回復して、486円安で終えた — 日経平均は6日ぶり反落

9月28日(月)の日経平均は、一時600円超上げて約1か月半ぶりに67,000円台を回復したあと、下げに転じて486円58銭安で終えました。6営業日ぶりの反落です。

指標終値前営業日比
日経平均65,877.62円−486.58円(−0.73%)
TOPIX4,112.00−16.59

1日の中身:

項目内容
寄り付き前週末の米半導体株高を受けて強含み
日中高値一時600円超上昇し、約1か月半ぶりに67,000円台を回復
その後利益確定売りが広がり、大引けにかけて下げ幅拡大(「陰の大引け坊主」)
重荷半導体の比重が高い韓国総合株価指数(KOSPI)の下落
上昇業種保険・銀行・電気ガス
下落業種医薬品・パルプ紙・鉱業

2. 今日から金曜まで、数字が続けて出ます — なお昨夜のNYの終値は、今朝は使いません

今週は水曜に米PCEと上期末、木曜に日銀短観、金曜に米雇用統計と、材料が続きます。なお昨夜(9/28)のニューヨークの終値は、2社以上で一致する数字を確認できなかったため、今朝の号では数字を使いません。

日付予定
9/29(火・今日)🩺 インフル第38週の公表、月例経済報告(9月)、米・消費者信頼感指数、米・JOLT求人件数
9/30(水)上期末、鉱工業生産(8月)、米・ADP雇用統計、米・PCEコア価格指数(8月)
10/1(木)日銀短観(7〜9月期)、米・ISM製造業景況指数
10/2(金)米・9月雇用統計、日・8月失業率、欧・9月HICP(消費者物価指数・速報)

昨夜のニューヨークについて、確認できたこと:

項目内容
方向ダウ・ナスダックとも下落して推移(複数の時間帯で一致)
背景中東情勢(ホルムズ海峡再開案を米大統領が拒否との報道)で原油が上昇、その後は交渉進展の報道で伸びが鈍化
背景米9月ダラス連銀製造業活動が予想を上回り、米長期金利の上昇にともなうドル買いが優勢に
終値2社以上で一致する数字を確認できず。今朝は使いません
Dr. K のひと言(火曜・"増やす"の話)

今日の主題は、きれいな試験でした。

「いちばん遅れて電気が届く場所に、電極を置けばもっと効くはずだ」——観察研究ではそう見えていました。理屈も通ります。そこでデンマークが国を挙げて、1,000人を二重盲検で無作為に振り分けました。

狙いは、当たっていました。標的群のリード位置は、平均9ミリ秒だけ遅い場所にありました。技術としては成功しています。

それでも、3年半以上見て、死亡と心不全入院は28%対26%。ハザード比1.10、p=0.45。変わりませんでした。そしてリードにまつわる合併症は、狙った側のほうが多かった。手技関連の死亡も、狙った側に1件。

足したのは工夫でした。増えたのは合併症でした。

もう1本も、同じ形をしています。鉄剤を出す。便秘になる。下剤を足す。高齢者の11.9%で起きています。ステロイドで気分が高ぶる。抗精神病薬を足す。この結びつきがいちばん強い(調整順序比2.55)。下剤が効きすぎて、止瀉薬を足す(2.53)に至っては、薬で作った状態を薬で戻しています。

どちらも、悪意はありません。目の前の症状を、よくしようとした結果です。だからこそ、気づきにくい。

一方で、増やすべきものもあります。今季のインフルワクチンは約5,190万回分。今週金曜までに6割超が出る計画です。流行はもう始まっていて、埼玉は1週で9.10から13.56へ増えました。これは、増やしていいものです。

最後に、今朝は一つ書けないことがあります。昨夜のニューヨークの終値が、2社で一致しませんでした。だから数字を書いていません。枠があるから埋める、をやめる——これも「増やさない」のうちだと思っています。

火曜日です。足す前に、一度だけ「これは何を増やすか」と考える。今日はそこを持って外来に入ります🩺💰

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