おはようございます。水曜日の朝のレポートをお届けします。
今日の隠れたテーマは 「減らしても、失わないもの」。今日の主題は、集中治療中の子どもの血圧目標を少しだけ下げた試験です。昇圧薬の量は37.5%減りました。30日時点の死亡と人工呼吸の期間には、差がつきませんでした。昨日の東京ではTOPIXが1.72%下げましたが、その一部は配当落ち——株主の手元に配当として移った分です。一方で、減らしてはいけないものもあります。昨日公表されたインフルエンザの第38週は全国8.48、前週の約1.5倍でした。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。
🩺 健康・医療ニュース
1.【第38週】全国8.48、前週の約1.5倍 — 44都道府県で増え、沖縄は26.27
9月29日(火)、厚生労働省が第38週(9/14〜20)の全国集計を公表しました。全国の定点当たり報告数は8.48で、第37週の5.54から約1.5倍になりました。
| 項目 | 第36週 | 第37週 | 第38週 |
| 全国の定点当たり | 3.29 | 5.54 | 8.48 |
| 報告数 | — | 20,697人 | 31,428人(約+52%) |
| 昨年同期(全国) | 0.50 | 0.72 | 0.80(今年は約10.6倍) |
定点当たり10(注意報の基準値)以上になった9都県:
| 都県 | 第37週 | 第38週 | 報告数 |
| 沖縄 | 16.61 | 26.27 | 1,156人 |
| 東京 | 9.53 | 15.21 | 6,281人 |
| 愛知 | 6.58 | 15.12(1週で2.3倍) | 2,464人 |
| 神奈川 | 9.45 | 14.71 | 3,427人 |
| 千葉 | 8.63 | 14.36 | 2,484人 |
| 埼玉 | 9.10 | 13.56 | 2,333人 |
| 茨城 | 9.85 | 13.47 | 916人 |
| 富山 | 7.67 | 10.77 | 517人 |
| 新潟 | 9.44 | 10.16 | 559人 |
次回の公表日(今回はPDFの1ページ目で確認しました):
令和8年第39週(令和8年9月21日から令和8年9月27日まで)分については、令和8年10月2日(金)公表予定です。
- 流行は止まるどころか、加速しています。
- 47都道府県のうち44で前週より増えました。減ったのは島根(3.30→3.20)・山口(8.03→5.13)・宮崎(1.93→0.71)の3県だけです。
- 首都圏4都県がそろって13〜15台に入り、愛知は1週で6.58から15.12へ2.3倍になりました。一方で大阪4.05、兵庫4.30、福岡5.34と、西日本はまだ低めです。地域差が大きい流行です。
- 沖縄は26.27。警報の開始基準(30)が見えてきました。
- 9/28号・9/29号でお伝えした埼玉の13.56は、全国集計の値と一致しました。都道府県の先行公表は、今回も先行指標として機能しています。
- この第38週(9/14〜20)と5連休の重なりは土日2日だけでした。連休中の平日(9/21〜23)が入る第39週は、10月2日(金)公表です。受診控えで数字が実態より低く出る可能性は、その回で見ます。
- 一般の方へ:インフルエンザの患者さんは、1週間で約1.5倍に増えました。去年の同じ時期の約10倍です。
- 東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・愛知・沖縄などでは、すでに「注意報」の目安を超えています。
- ワクチンは今週から本格的に届き始めます(9/29号)。打てるようになったら、先送りしないでください。熱が出たら、無理に出勤・登校しないことがいちばんの対策です。
2. 入院も、学級閉鎖も、3週続けて増えている — ICU入室は9→22→38人
同じ第38週のPDFには、入院と学校の数字も載っています。どちらも3週続けて増えています。
インフルエンザによる入院(全国約500の基幹定点医療機関からの届出):
| 週 | 8/31〜9/6 | 9/7〜9/13 | 9/14〜9/20 |
| 入院患者数 | 284人 | 479人 | 752人 |
| ICU入室 | 9人 | 22人 | 38人 |
| 人工呼吸器の利用 | 8人 | 11人 | 25人 |
第38週の入院を年齢で見ると:
| 年齢 | 入院患者数 |
| 80歳以上 | 222人 |
| 70〜79歳 | 135人 |
| 1〜4歳 | 95人 |
| 5〜9歳 | 90人 |
| 60〜69歳 | 74人 |
休校・学年閉鎖・学級閉鎖(保育所〜高校):
| 週 | 休校 | 学年閉鎖 | 学級閉鎖 | 施設数の合計 |
| 第36週 | 5 | 34 | 128 | 167 |
| 第37週 | 11 | 130 | 528 | 669 |
| 第38週 | 19 | 171 | 870 | 1,060 |
- 外来の数字だけでなく、重症の側も増えています。
- 入院は284→479→752人。ICU入室は9→22→38人、人工呼吸器は8→11→25人と、重症度の高い指標ほど増え方が急です。
- 入院の年齢は80歳以上(222人)と70代(135人)が最多ですが、1〜4歳(95人)・5〜9歳(90人)も続いています。高齢者と小児の両端で入院が出ている流行です。病床の手当ては、成人病棟と小児病棟の両方で考える必要があります。
- 学級閉鎖は128→528→870。学校で広がり、家庭の高齢者に持ち込まれる——という経路を、外来の説明にそのまま使えます。
- 一般の方へ:入院する人も、3週続けて増えています。いちばん多いのは80歳以上の方で、小さな子どもも入院しています。
- お子さんのクラスが学級閉鎖になったら、おじいちゃん・おばあちゃんとの接触には気をつけてください。
- 高齢のご家族は、ワクチンが打てるようになったら早めに。
📚 注目論文・エビデンス
1.【今日の主題】血圧の目標を下げて、昇圧薬を37.5%減らした — 30日の結果に差はつかなかった(PRESSURE)
人工呼吸と昇圧薬(血管作動薬)が必要な重症の子どもで、平均血圧の目標を「年齢の5パーセンタイルを超えればよい」まで緩めました。昇圧薬の総量は37.5%減り、30日時点の死亡と人工呼吸期間の複合評価には差がつきませんでした。JAMAに9月28日オンライン掲載。
| 項目 | 内容 |
| 試験名 | PRESSURE(ISRCTN20609635) |
| デザイン | 多施設・非盲検・実践的(プラグマティック)無作為化試験 |
| 実施施設 | 3か国・23の小児集中治療室(PICU) |
| 登録期間 | 2021年11月〜2026年5月(30日追跡は2026年6月に完了) |
| 対象 | 侵襲的人工呼吸を受け、低血圧に血管作動薬を使っている重症小児 |
| 症例数 | 1,900人を無作為化(主要解析は910人対904人) |
| 背景 | 年齢中央値 4歳(IQR 0〜10)、女性44.8% |
介入と結果:
| 許容的な目標(年齢の5パーセンタイル超) | 通常ケア(主治医が設定) |
| 無作為化 | 957人 | 943人 |
| 昇圧薬投与中の平均血圧(中央値) | 58 mmHg(51〜63) | 61 mmHg(54〜67) |
| 昇圧薬の総量(ノルアドレナリン換算の中央値) | 37.5%少ない | — |
| 主要評価(30日の死亡+人工呼吸期間の複合) | 確率指数 0.52(95%CI 0.49〜0.54)/P = .23 | — |
| 副次評価7項目 | 6項目は同等 | — |
| 生存者のPICU滞在(中央値) | 159時間(79〜286) | 166時間(92〜319) |
| 腎代替療法・有害事象 | 差なし | 差なし |
- 「血圧は高めに保っておけば安全」という感覚に、データで一石を投じた試験です。
- 目標を緩めた結果、昇圧薬中の平均血圧は58対61 mmHg——3 mmHgの差でした。その3 mmHgのために、通常ケア群は昇圧薬を1.6倍使っていた計算になります(37.5%減の裏返し)。
- 主要評価の確率指数は0.52(0.49〜0.54)、P = .23。有意差はありません。副次7項目のうち6項目も同等で、生存者のPICU滞在は159対166時間と、許容群のほうがわずかに短い結果でした。腎代替療法や有害事象も増えていません。
- 実務的には、「昇圧薬を上げる前に、その目標値は本当に必要か」を問い直す根拠になります。昨日の号のテーマ「増えてしまったもの」を、ICUの側から見た試験です。
- 限界:これは優越性試験で、主要評価に「差がなかった」という結果です。「減らしても同等」を証明する非劣性試験ではありません。確率指数の信頼区間は0.49〜0.54で、わずかに不利な側もまたいでいます。非盲検で、通常ケア群の目標は主治医任せのため施設によって幅があります。対象は小児で、成人の敗血症性ショックにそのまま当てはめることはできません。
- 一般の方へ:集中治療室で、血圧を上げる薬を使っている重い病気の子どもたちの研究です。
- 血圧の目標を少しだけ低く設定したら、薬の量は4割近く減りました。それでも、1か月後の命や人工呼吸器の期間には差がありませんでした。
- 「多いほど安心」とは限らない——そのことを、きちんと比べて確かめた研究です。
2. 骨ができてしまう希少疾患で、新しい病変が19個から1〜2個へ — ただし用量を上げても良くはならなかった(OPTIMA)
筋肉や腱が少しずつ骨に変わっていく超希少疾患「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」で、アクチビンAを抑える抗体ガレトスマブが、新しくできる骨の病変を大きく減らしました。Lancetに9月28日オンライン掲載。
| 項目 | 内容 |
| 試験名 | OPTIMA(NCT05394116) |
| デザイン | 無作為化・二重盲検・プラセボ対照・第3相 |
| 実施施設 | 16の国・地域の18施設 |
| 登録期間 | 2022年11月21日〜2024年7月4日 |
| 対象 | 18歳以上のFOP患者 63人(平均26.6歳、女性60%) |
| 投与 | 毎月の点滴:プラセボ/ガレトスマブ 3 mg/kg/10 mg/kg(1:1:1) |
| 資金 | Regeneron社(開発企業) |
結果(56週):
| プラセボ | 3 mg/kg | 10 mg/kg |
| 例数 | 21人 | 19人 | 23人 |
| 新しい異所性骨の病変(総数) | 19個 | 1個 | 2個 |
| 率比(対プラセボ) | — | 0.06(95%CI 0.00〜0.73)/p=0.027 | 0.10(0.01〜0.76)/p=0.026 |
| 特に注目すべき有害事象 | 1人(5%) | 0人 | 4人(17%) |
| 死亡 | 0 | 0 | 0 |
- 治療法のなかった疾患で、第3相の二重盲検で病変の新生を抑えた点は大きな前進です。
- プラセボ群19個に対し、3 mg/kg群で1個、10 mg/kg群で2個。率比は0.06と0.10です。
- 今日のテーマで見るべきは用量の比較です。10 mg/kgに上げても、新しい病変は減りませんでした(1個→2個)。一方で特に注目すべき有害事象は0%→17%に増えています。この試験の範囲では、多く入れても効果は増えず、副作用だけが増えた形です。
- 限界:63人・病変の総数が19個対1〜2個という小さな数での比較です。率比の信頼区間は0.00〜0.73、0.01〜0.76と非常に広く、効果の大きさはまだ粗い推定です。用量間の差も、この規模では偶然の範囲を出ません。開発企業の資金による試験です。
- 一般の方へ:体の筋肉や腱が、少しずつ骨に変わってしまう、とてもまれな病気の薬です。
- 新しく骨ができた数が、薬を使わない人たちの19個に対して、薬を使った人たちでは1〜2個でした。
- ただし、量を増やしたグループのほうが副作用が多く、効果は増えていません。薬は「多ければ多いほどよい」わけではありません。
💰 金融・税制ニュース
1. TOPIXは1.72%安 — ただし、その一部は「配当落ち」で株主の手元に移った分
9月29日(火)の東京は続落しました。日経平均は一時1,100円を超えて下げ、396円35銭安で終えました。TOPIXは70.87ポイント安(−1.72%)と、下げ率は日経平均より大きくなっています。この日は9月末の配当の権利落ち日でした。
| 指標 | 終値 | 前日比 |
| 日経平均 | 65,481.27円 | −396.35円(−0.60%)、一時1,100円超安 |
| TOPIX | 4,041.13 | −70.87(−1.72%) |
| JPXプライム150 | 1,696.59 | −25.28(−1.47%) |
| 項目 | 内容 |
| 東証プライム | 値下がり 1,318/値上がり 170/変わらず 21 |
| 売買代金 | 約 7兆3,224億円 |
| 重荷 | 米株安と配当落ち(日本経済新聞) |
| 配当落ちの影響の見込み | 日経平均を300円あまり下押しする要因(日本経済新聞・9/29朝の見立て) |
- 配当落ちの日の下げは、ほかの日の下げと中身が違います。権利落ちで株価が下がる分は、配当として株主に支払われる分です。株を持っている人から見れば、財布の中身が「株」から「配当」に移っただけで、その分は失っていません。
- 日本経済新聞の事前の見立てでは、配当落ちは日経平均を300円あまり下押しする要因でした。実際の下げは396円35銭です。見た目の下げのかなりの部分を、配当落ちが占めている可能性があります。
- もちろん、それだけではありません。値下がり1,318銘柄に対して値上がり170銘柄と、広く売られた1日でした。一時1,100円を超えて下げています。
- つみたて中心の方は、指数が下がった日に配当が入っていることを覚えておくと、数字に振り回されにくくなります。投資信託なら、分配金を出さない型でも配当は中で再投資されています。
- ※相場は日々変動します。本レポートは今後の値動きを断定するものではありません。
- 一般の方へ:9月末に株を持っていた人には、配当を受け取る権利がつきました。その翌日に株価がその分下がるのは、毎年決まって起きることです。
- 「株価が下がった」というニュースの中に、こういう「見かけの下げ」が混じっている日があります。
2.【昨日のお約束】9/28のNY終値が確定しました — そして昨夜は米国の景気指標が弱く出た
昨日の号で「2社で一致する数字が取れなかったので使わない」とした9月28日のニューヨークの終値が、2社で確認できました。ダウは347.11ドル安でした。昨夜(9/29)は米国の消費者信頼感と求人件数がそろって予想を下回り、10月の利上げ観測がやや後退しています。
9月28日のニューヨーク(確定値):
| 指標 | 終値 | 前日比 |
| NYダウ | 51,481.51ドル | −347.11ドル |
| ナスダック総合 | 26,820.38 | −248.34 |
9月29日に発表された米国の指標:
| 指標 | 結果 | 前回 | 評価 |
| 9月 消費者信頼感指数 | 81.9 | 88.6 | 予想を下回り、2014年以来の低水準 |
| 8月 JOLTS求人件数 | 707.9万件 | 733.5万件 | 予想を下回り、3月以来の低水準 |
| 米10年債利回り | 5.26% → 5.25% | — | 指標を受けて小幅に低下 |
| ドル円(9/29ニューヨーク) | 156円98銭まで下落後、157円60銭で引け | — | — |
今日からの予定:
| 日付 | 予定 |
| 9/30(水・今日) | 上期末、鉱工業生産(8月)、米・ADP雇用統計、米・PCEコア価格指数(8月) |
| 10/1(木) | 日銀短観(7〜9月期)、米・ISM製造業景況指数 |
| 10/2(金) | 米・9月雇用統計、日・8月失業率、🩺 インフル第39週の公表 |
- まずお約束の答えです。9月28日のダウは347.11ドル安の51,481.51ドル。日本経済新聞と財経新聞で一致しました。中東情勢による原油高と、米長期金利の上昇が重荷でした。
- 昨夜(9/29)のニューヨークの終値は、今朝の時点でまだ2社で確認できていません。日中はダウが下げて推移していましたが、終値は明日お伝えします。
- 消費者信頼感が2014年以来の低さ、求人も3月以来の少なさ。米国の景気にブレーキがかかり始めた兆しとも読めます。これを受けて10月の利上げ観測が後退し、10年債利回りは5.26%から5.25%へわずかに下がりました。
- ここから金曜の雇用統計まで、「利上げを続けるか、止めるか」の材料が毎日出ます。今日のPCE(物価)、明日の短観(日本企業の景況感)、金曜の雇用統計です。
- ※相場は日々変動します。本レポートは今後の値動きを断定するものではありません。
- 一般の方へ:アメリカの人たちの「景気の先行き」への気持ちが、12年ぶりの低さまで落ちました。
- アメリカの金利の行方は、円相場や住宅ローン金利を通じて、日本の暮らしにも届きます。金曜の雇用統計がひとつの山場です。
📌 免責事項:本Morning Briefは情報提供を目的とした要約記事であり、医学的・投資的判断を行うものではありません。引用元の一次情報を必ずご確認ください。診療判断・投資判断は各専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。
昨日は「増えてしまったもの」の話をしました。今日はその続きで、「減らしても、失わないもの」の話です。
集中治療室で、昇圧薬を使っている子どもたち。血圧の目標を、少しだけ下げてみた試験がありました。実際の血圧の差は58対61、たった3 mmHgです。それで昇圧薬の量は37.5%減りました。
そして30日時点の死亡と人工呼吸の期間には、差がつきませんでした。生き延びた子のICU滞在は、むしろ少し短かった。
ここは正直に書いておきます。「差がなかった」は「同じだと証明された」とは違います。この試験は減らして良くなるかを見る設計で、減らしても同等かを証明する設計ではありません。それでも、3 mmHgのために1.6倍の薬を使う理由は、少なくとも見えなくなりました。
もう1本の希少疾患の薬も、形は似ています。用量を3倍以上に上げても、新しい病変は減らず(1個→2個)、副作用は0%から17%に増えました。「多ければ多いほどよい」ではありませんでした。
昨日の東京も、見た目ほどは減っていません。TOPIXは1.72%下げましたが、その一部は配当落ち——株主の手元に配当として移った分です。減ったように見えて、失っていない。
ただし、減らしてはいけないものもあります。インフルエンザの第38週は全国8.48、前週の約1.5倍。44都道府県で増え、入院は752人、ICU入室は38人でした。警戒は、減らす局面ではありません。
最後に一つ。今回は第38週のPDFの1ページ目を、最初に読みました。第39週は10月2日(金)公表です。
今日は上期末です。減らせるものは減らし、減らしてはいけないものは減らさない。半期の締めに、その仕分けを一度やってみてください。水曜日、今日も良い一日を🩺💰