📰 Dr. K's MORNING BRIEF
2026年9月30日(水)

減らしても、失わないもの。
昇圧薬を37.5%減らして、差はつかなかった。

現役医師 Dr. K が厳選した、健康・医療・金融の今朝のヘッドライン。

おはようございます。水曜日の朝のレポートをお届けします。

今日の隠れたテーマは 「減らしても、失わないもの」。今日の主題は、集中治療中の子どもの血圧目標を少しだけ下げた試験です。昇圧薬の量は37.5%減りました。30日時点の死亡と人工呼吸の期間には、差がつきませんでした。昨日の東京ではTOPIXが1.72%下げましたが、その一部は配当落ち——株主の手元に配当として移った分です。一方で、減らしてはいけないものもあります。昨日公表されたインフルエンザの第38週は全国8.48、前週の約1.5倍でした。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。

🩺 健康・医療ニュース

1.【第38週】全国8.48、前週の約1.5倍 — 44都道府県で増え、沖縄は26.27

9月29日(火)、厚生労働省が第38週(9/14〜20)の全国集計を公表しました。全国の定点当たり報告数は8.48で、第37週の5.54から約1.5倍になりました。

項目第36週第37週第38週
全国の定点当たり3.295.548.48
報告数—20,697人31,428人(約+52%)
昨年同期(全国)0.500.720.80(今年は約10.6倍)

定点当たり10(注意報の基準値)以上になった9都県:

都県第37週第38週報告数
沖縄16.6126.271,156人
東京9.5315.216,281人
愛知6.5815.12(1週で2.3倍)2,464人
神奈川9.4514.713,427人
千葉8.6314.362,484人
埼玉9.1013.562,333人
茨城9.8513.47916人
富山7.6710.77517人
新潟9.4410.16559人

次回の公表日(今回はPDFの1ページ目で確認しました):

令和8年第39週(令和8年9月21日から令和8年9月27日まで)分については、令和8年10月2日(金)公表予定です。

2. 入院も、学級閉鎖も、3週続けて増えている — ICU入室は9→22→38人

同じ第38週のPDFには、入院と学校の数字も載っています。どちらも3週続けて増えています。

インフルエンザによる入院(全国約500の基幹定点医療機関からの届出):

週8/31〜9/69/7〜9/139/14〜9/20
入院患者数284人479人752人
ICU入室9人22人38人
人工呼吸器の利用8人11人25人

第38週の入院を年齢で見ると:

年齢入院患者数
80歳以上222人
70〜79歳135人
1〜4歳95人
5〜9歳90人
60〜69歳74人

休校・学年閉鎖・学級閉鎖(保育所〜高校):

週休校学年閉鎖学級閉鎖施設数の合計
第36週534128167
第37週11130528669
第38週191718701,060

📚 注目論文・エビデンス

1.【今日の主題】血圧の目標を下げて、昇圧薬を37.5%減らした — 30日の結果に差はつかなかった(PRESSURE)

人工呼吸と昇圧薬(血管作動薬)が必要な重症の子どもで、平均血圧の目標を「年齢の5パーセンタイルを超えればよい」まで緩めました。昇圧薬の総量は37.5%減り、30日時点の死亡と人工呼吸期間の複合評価には差がつきませんでした。JAMAに9月28日オンライン掲載。

項目内容
試験名PRESSURE(ISRCTN20609635)
デザイン多施設・非盲検・実践的(プラグマティック)無作為化試験
実施施設3か国・23の小児集中治療室(PICU)
登録期間2021年11月〜2026年5月(30日追跡は2026年6月に完了)
対象侵襲的人工呼吸を受け、低血圧に血管作動薬を使っている重症小児
症例数1,900人を無作為化(主要解析は910人対904人)
背景年齢中央値 4歳(IQR 0〜10)、女性44.8%

介入と結果:

許容的な目標(年齢の5パーセンタイル超)通常ケア(主治医が設定)
無作為化957人943人
昇圧薬投与中の平均血圧(中央値)58 mmHg(51〜63)61 mmHg(54〜67)
昇圧薬の総量(ノルアドレナリン換算の中央値)37.5%少ない—
主要評価(30日の死亡+人工呼吸期間の複合)確率指数 0.52(95%CI 0.49〜0.54)/P = .23—
副次評価7項目6項目は同等—
生存者のPICU滞在(中央値)159時間(79〜286)166時間(92〜319)
腎代替療法・有害事象差なし差なし

2. 骨ができてしまう希少疾患で、新しい病変が19個から1〜2個へ — ただし用量を上げても良くはならなかった(OPTIMA)

筋肉や腱が少しずつ骨に変わっていく超希少疾患「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」で、アクチビンAを抑える抗体ガレトスマブが、新しくできる骨の病変を大きく減らしました。Lancetに9月28日オンライン掲載。

項目内容
試験名OPTIMA(NCT05394116)
デザイン無作為化・二重盲検・プラセボ対照・第3相
実施施設16の国・地域の18施設
登録期間2022年11月21日〜2024年7月4日
対象18歳以上のFOP患者 63人(平均26.6歳、女性60%)
投与毎月の点滴:プラセボ/ガレトスマブ 3 mg/kg/10 mg/kg(1:1:1)
資金Regeneron社(開発企業)

結果(56週):

プラセボ3 mg/kg10 mg/kg
例数21人19人23人
新しい異所性骨の病変(総数)19個1個2個
率比(対プラセボ)—0.06(95%CI 0.00〜0.73)/p=0.0270.10(0.01〜0.76)/p=0.026
特に注目すべき有害事象1人(5%)0人4人(17%)
死亡000

💰 金融・税制ニュース

1. TOPIXは1.72%安 — ただし、その一部は「配当落ち」で株主の手元に移った分

9月29日(火)の東京は続落しました。日経平均は一時1,100円を超えて下げ、396円35銭安で終えました。TOPIXは70.87ポイント安(−1.72%)と、下げ率は日経平均より大きくなっています。この日は9月末の配当の権利落ち日でした。

指標終値前日比
日経平均65,481.27円−396.35円(−0.60%)、一時1,100円超安
TOPIX4,041.13−70.87(−1.72%)
JPXプライム1501,696.59−25.28(−1.47%)
項目内容
東証プライム値下がり 1,318/値上がり 170/変わらず 21
売買代金約 7兆3,224億円
重荷米株安と配当落ち(日本経済新聞)
配当落ちの影響の見込み日経平均を300円あまり下押しする要因(日本経済新聞・9/29朝の見立て)

2.【昨日のお約束】9/28のNY終値が確定しました — そして昨夜は米国の景気指標が弱く出た

昨日の号で「2社で一致する数字が取れなかったので使わない」とした9月28日のニューヨークの終値が、2社で確認できました。ダウは347.11ドル安でした。昨夜(9/29)は米国の消費者信頼感と求人件数がそろって予想を下回り、10月の利上げ観測がやや後退しています。

9月28日のニューヨーク(確定値):

指標終値前日比
NYダウ51,481.51ドル−347.11ドル
ナスダック総合26,820.38−248.34

9月29日に発表された米国の指標:

指標結果前回評価
9月 消費者信頼感指数81.988.6予想を下回り、2014年以来の低水準
8月 JOLTS求人件数707.9万件733.5万件予想を下回り、3月以来の低水準
米10年債利回り5.26% → 5.25%—指標を受けて小幅に低下
ドル円(9/29ニューヨーク)156円98銭まで下落後、157円60銭で引け——

今日からの予定:

日付予定
9/30(水・今日)上期末、鉱工業生産(8月)、米・ADP雇用統計、米・PCEコア価格指数(8月)
10/1(木)日銀短観(7〜9月期)、米・ISM製造業景況指数
10/2(金)米・9月雇用統計、日・8月失業率、🩺 インフル第39週の公表
Dr. K のひと言(水曜・"減らす"の話)

昨日は「増えてしまったもの」の話をしました。今日はその続きで、「減らしても、失わないもの」の話です。

集中治療室で、昇圧薬を使っている子どもたち。血圧の目標を、少しだけ下げてみた試験がありました。実際の血圧の差は58対61、たった3 mmHgです。それで昇圧薬の量は37.5%減りました。

そして30日時点の死亡と人工呼吸の期間には、差がつきませんでした。生き延びた子のICU滞在は、むしろ少し短かった。

ここは正直に書いておきます。「差がなかった」は「同じだと証明された」とは違います。この試験は減らして良くなるかを見る設計で、減らしても同等かを証明する設計ではありません。それでも、3 mmHgのために1.6倍の薬を使う理由は、少なくとも見えなくなりました。

もう1本の希少疾患の薬も、形は似ています。用量を3倍以上に上げても、新しい病変は減らず(1個→2個)、副作用は0%から17%に増えました。「多ければ多いほどよい」ではありませんでした。

昨日の東京も、見た目ほどは減っていません。TOPIXは1.72%下げましたが、その一部は配当落ち——株主の手元に配当として移った分です。減ったように見えて、失っていない。

ただし、減らしてはいけないものもあります。インフルエンザの第38週は全国8.48、前週の約1.5倍。44都道府県で増え、入院は752人、ICU入室は38人でした。警戒は、減らす局面ではありません。

最後に一つ。今回は第38週のPDFの1ページ目を、最初に読みました。第39週は10月2日(金)公表です。

今日は上期末です。減らせるものは減らし、減らしてはいけないものは減らさない。半期の締めに、その仕分けを一度やってみてください。水曜日、今日も良い一日を🩺💰

📌 免責事項:本Morning Briefは情報提供を目的とした要約記事であり、医学的・投資的判断を行うものではありません。引用元の一次情報を必ずご確認ください。診療判断・投資判断は各専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。