現役医師 Dr. K が厳選した、健康・医療・金融の今朝のヘッドライン。
おはようございます。金曜日の朝のレポートをお届けします。
今日の隠れたテーマは 「怖く見える数字と、実際に起きていること」。今日の主題は、HPVワクチンを妊娠前に受けた女性の、妊娠の経過を調べたスウェーデンの約62万件の研究です。日本ではかつて、HPVワクチンへの不安から積極的な勧奨が長く控えられました。データが示したのは、早産などのリスクがわずかに「低い」という関連でした。もう1本は、血圧をしっかり下げると腎機能の数字は下がるのに、腎不全は増えなかったというメタ解析です。昨日のHPVワクチン男性接種の部会は「継続審議」、東京市場では日経平均が7万円を割りました。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。
10/6号・10/7号でお伝えした厚生労働省の予防接種基本方針部会が10月8日に開かれ、男性へのHPVワクチンの定期接種化は「継続審議」となりました(日刊薬業の報道)。7月の小委員会に続き、結論は持ち越しです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会議 | 第78回 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会(10月8日) |
| 結果 | 男性へのHPVワクチンの定期接種化は継続審議 |
| これまでの経緯 | 7月22日の小委員会で費用対効果の分析が示され、効果の持続期間を20年と置く基本分析では1QALYあたり1億7,144万円、50年なら3,232万円(10/6号)。了承は先送り |
| 今後の分析 | 男性の接種が女性に与える間接効果について、今年度中を目途に新たな分析モデルを構築する方針(7月時点、MSDの声明による) |
今日10月9日(金)14時、厚生労働省から第40週(9/28〜10/4)の全国集計が公表される予定です。第39週は連休を含み、全国は8.48から7.17に下がっていました。埼玉県はすでに第40週を公表しており、19.66(前週から+5.49)でした(10/8号)。
| 見るところ | 第39週(連休あり) | 今日の第40週で確かめること |
|---|---|---|
| 全国 | 7.17(前週8.48から減少) | 再び増加に転じるか |
| 首都圏 | 東京15.21→9.51、神奈川14.71→8.59、千葉14.36→9.76 | 連休で大きく下がった分が戻るか |
| 埼玉 | 13.56→14.17 | 第40週は19.66(公表済み) |
| 沖縄 | 26.27→42.50(警報) | 警報レベルが続くか |
スウェーデン全国の出産データで、妊娠前に4価HPVワクチンを受けていた女性と受けていなかった女性の、妊娠の経過を比べた研究です。ワクチンを受けていた女性は、早産や、重度のSGA(在胎週数に比べて小さく生まれること)などのリスクが、わずかに低いという関連が見られました。BMJに10月7日掲載。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デザイン | 全国規模の症例対照研究(マッチングあり) |
| 対象 | 2006〜2023年にスウェーデンで生まれた単胎児 624,713件(初産・16〜35歳の母親) |
| ワクチン接種 | 妊娠前に4価HPVワクチンを受けていた母親 92,620人(14.8%) |
| 主要評価 | 早産(37週未満)とそのサブタイプ、自然早産 |
| 副次評価 | 前期破水、SGA(在胎週数に比べて小さく生まれた児)、死産、新生児死亡など |
| 解析 | 交絡因子を調整した条件付きロジスティック回帰 |
| 資金 | スウェーデンがん協会、スウェーデン研究評議会など(公的・非営利) |
結果(ワクチン接種あり vs なしの調整オッズ比):
| 妊娠の結果 | 調整オッズ比(95%CI) |
|---|---|
| 早産(37週未満) | 0.95(0.91〜0.99) |
| 早期早産(28〜31週) | 0.85(0.75〜0.97) |
| 自然早産 | 0.95(0.91〜0.99) |
| 前期破水(早産期) | 0.93(0.87〜1.00) |
| 重度のSGA(3パーセンタイル未満) | 0.92(0.87〜0.97) |
調べたすべての有害な妊娠の結果で、オッズ比は1を下回りました。リスクの低下は、若い年齢で接種した女性ほどはっきりしていました。
血圧を厳しく下げる治療と標準的な治療を比べた無作為化試験27本・約8.9万人を、慢性腎臓病(CKD)がある人とない人に分けて解析したメタ解析です。厳しい降圧は、CKDの有無にかかわらず心血管イベントを減らし、腎機能の指標(eGFR)の低下は増えたものの、腎不全は増えませんでした。JAMA Cardiologyに10月7日掲載。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デザイン | 系統的レビュー・メタ解析(無作為化試験のみ、追跡1年以上) |
| 対象 | 27試験・88,830人(CKDあり・なしの成人) |
| 比較 | 厳しい降圧 vs 標準的な降圧 |
| 解析 | 収縮期血圧の差で標準化(収縮期血圧10mmHg低下あたりの効果) |
| 主要評価 | 主要な心血管イベント |
結果(収縮期血圧10mmHg低下あたり):
| 評価項目 | 相対リスク(95%CI) | CKDによる違い |
|---|---|---|
| 主要な心血管イベント | 0.85(0.81〜0.89)=15%減少 | なし |
| 絶対リスクの減少(1,000人年あたり) | CKDあり 4.3件/CKDなし 2.7件 | — |
| 腎不全 | 0.97(0.84〜1.11)=増えず | なし |
| eGFRの50%以上・57%以上の持続的低下 | 1.29(0.94〜1.76)/0.97(0.83〜1.14) | なし |
| eGFRの30%以上の持続的低下 | 1.42(1.28〜1.58) | — |
| eGFRの40%以上の持続的低下 | 1.47(1.30〜1.66) | — |
10月8日(木)の日経平均は993円60銭安の69,042円11銭と続落し、終値で7万円を割り込みました。この日の安値で取引を終えています。TOPIXは62.65ポイント安の4,091.46(−1.51%)です。
| 指標 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 日経平均 | 69,042.11円 | −993.60円(−1.42%) |
| TOPIX | 4,091.46 | −62.65(−1.51%) |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 東証プライムの値上がり/値下がり | 327銘柄/1,182銘柄 |
| 売買代金 | 約7兆6,133億円 |
| 日経平均を最も押し下げた銘柄 | ソフトバンクグループ(約218円分) |
| 主な材料 | 前日の欧米株安・金利高への懸念、TSMCの9月の月次売上高、イランの再攻撃検討の報道で原油先物が強含み |
TSMCの9月の月次売上高:5,118億5,700万台湾ドル。前年同月比は+54.6%と好調でしたが、前月比は−0.6%。これを嫌気して、発表後に半導体関連の一角に売りが出ました。
米国(10/7・水曜):ダウは341.41ドル安の51,179.87ドルで5日ぶりに反落、ナスダックは61.20ポイント安の27,538.69。米長期金利の高止まりと、キャタピラーの急落が重荷でした。昨夜(10/8)のNY終値は、今朝の時点で2社で確認できていないため、数字は使いません。
10/7号・10/8号で予定をお伝えした日銀の地域経済報告(さくらリポート、10月)が8日に公表されました。全国9地域のうち東北と四国の景気判断を引き上げ、残る7地域は前回7月から据え置きです。すべての地域で、景気は「緩やかに回復」「持ち直し」「緩やかに持ち直し」としています。
| 地域 | 7月の判断 | 10月の判断 |
|---|---|---|
| 東北 | 持ち直している | 緩やかに回復している(引き上げ) |
| 四国 | 緩やかに持ち直している | 持ち直している(引き上げ) |
| 関東甲信越 | 中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復 | 同じ(据え置き) |
| 九州・沖縄 | 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復 | 「令和8年熊本地震の影響などから一部に弱めの動き」の文言を加えて、緩やかに回復(据え置き) |
| 北海道・北陸・東海・近畿・中国 | — | 据え置き |
今日と来週の予定:
| 日時 | 予定 |
|---|---|
| 今日 | オプションSQ、8月家計調査(8:30)、9月工作機械受注、🩺 インフル第40週の全国集計(14時) |
| 10/12(月) | スポーツの日(祝日)で東京市場は休場 |
血圧の薬を増やしたあと、腎機能の検査値(eGFR)が下がると、医師も患者さんも不安になります。
今日の論文では、厳しい降圧でeGFRの大きな低下は4割ほど増えたのに、腎不全は増えていませんでした。そして心臓や血管の病気は15%減っていました。怖く見える数字と、実際に起きていることは、別でした。
今日の主題も同じです。HPVワクチンが妊娠に悪い影響を与えるのでは、という不安がありました。スウェーデンの約62万件のデータでは、悪影響を示す結果はなく、むしろ早産などがわずかに少ないという関連でした。ただし差は小さく、観察研究です。「良い効果がある」より「悪影響を示すデータが見当たらない」と読むのが正直なところです。
株価も同じかもしれません。日経平均が7万円を割ったという見出しは強く見えますが、今週月曜の終値から約900円低いだけです。TSMCの売上も、前月比なら減少、前年比なら5割増です。
不安なときこそ、「その数字は、何が起きたことを表しているのか」を確かめる。それだけで、判断はずいぶん落ち着きます。
今日の14時にインフルエンザの全国集計です。来週月曜は祝日なので、答え合わせは来週の号で。今週もお疲れさまでした。よい3連休を🩺💰