高収入だからこそ入りすぎている保険。不要な保険を削り、浮いた保険料をNISA・iDeCoに回すだけで、資産形成が劇的に加速します。
日本の医師は平均で月3〜5万円の保険料を支払っていると言われます。年間にすると36〜60万円。10年で360〜600万円。この金額をインデックス投資に回していたら…と考えると、背筋が凍りませんか?
「医者になったんだから保険くらい入りなさい」。親世代は保険=安心という価値観が強く、研修医時代に言われるがまま加入するケースが非常に多い。内容を理解しないまま何年も払い続けている。
「年収が高いから保障も大きくしないと」という発想。しかし高収入=貯蓄が多い=必要保障額は少ないのが正しいロジック。収入の大きさと保険の必要性は反比例する。
忙しい医師は保険の営業マンに「先生のためのプランです」と言われると断れない。医局の先輩に紹介されると尚更。結果、同じような保障が重複した保険を何本も抱えている。
資産形成 = 収入 − 支出 × 運用利回り × 時間
保険料は「固定支出」の中でも見直し効果が大きい項目。月2万円の削減でも、年利5%で20年運用すれば約820万円の差がつきます。
保険の見直しで最初にやるべきことは、「自分にいくらの保障が本当に必要なのか」を計算することです。多くの医師は、この計算をせずに保険に加入しています。
必要保障額 = 遺族の支出総額 − 遺族の収入総額
支出側:生活費 + 教育費 + 住居費 + 予備費
収入側:遺族年金 + 団信(住宅ローン免除)+ 貯蓄・投資資産 + 配偶者の収入 + 死亡退職金
| 家族構成 | 年収1,000万円 | 年収1,500万円 | 年収2,000万円 |
|---|---|---|---|
| 独身・子なし | 0円 | 0円 | 0円 |
| 夫婦・子なし | 500〜1,000万円 | 0〜500万円 | 0円 |
| 夫婦・子1人 | 2,000〜3,000万円 | 1,500〜2,500万円 | 1,000〜2,000万円 |
| 夫婦・子2人 | 3,000〜4,000万円 | 2,500〜3,500万円 | 2,000〜3,000万円 |
※住宅ローンありの場合は団信で住居費がカバーされるため、上記から住居費分を差し引く。貯蓄・投資資産が多い場合はさらに減少。
上の表を見てください。独身の医師に生命保険は不要です。子なし夫婦でも、年収1,500万円以上で貯蓄があれば必要保障額はほぼゼロ。にもかかわらず、独身で月3万円の保険料を払っている医師がいかに多いことか…。
結論から言います。医師が入るべき保険は驚くほど少ない。以下の○×判定表で、あなたの保険を総点検してください。
| 保険の種類 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 掛捨て定期保険 | ◎ | 子育て期間中のみ加入。必要保障額を低コストでカバーできる唯一の手段。 |
| 就業不能保険 | ○ | 長期入院・精神疾患で働けなくなるリスクへの備え。傷病手当金が出ない開業医は特に重要。 |
| 医師賠償責任保険 | ◎ | 医療訴訟リスクに備える必須保険。勤務医でも個人加入を推奨。 |
| 個人賠償責任保険 | ○ | 日常生活での損害賠償に備える。月数百円と低コスト。 |
| 火災保険・地震保険 | ○ | 持ち家の場合は必須。賃貸でも家財保険は推奨。 |
| 自動車保険(対人対物) | ◎ | 車を所有するなら必須。高収入ほど賠償請求額が高くなる傾向あり。 |
| 貯蓄型終身保険 | ✕ | 保障と貯蓄を混ぜた非効率の極み。保障は掛捨て、貯蓄はNISAで分離すべき。 |
| 医療保険 | ✕ | 高額療養費制度で月8〜25万円程度に自己負担が収まる。貯蓄で十分対応可能。 |
| がん保険 | △ | 先進医療特約のみ検討の余地あり。基本的には貯蓄で対応可能。 |
| 学資保険 | ✕ | 利回り0.5〜1%。こどもNISA(期待利回り3〜7%)の方が圧倒的に有利。 |
| 個人年金保険 | ✕ | 利回りが低くインフレに弱い。iDeCo・NISAで代替すべき。 |
| 外貨建て保険 | ✕ | 手数料が高く為替リスクも負う。外貨で運用したいなら投信で直接購入した方が低コスト。 |
| 変額保険 | ✕ | 保険の皮を被った高コスト投資信託。保障と運用を分離すべき。 |
「低確率×大損害」のリスクだけ保険でカバーする。高確率のリスク(風邪・軽い怪我)は貯蓄で、高頻度の出費(教育費・老後資金)は投資で対応。保険はあくまで「起きたら人生が詰むリスク」だけに使う。
必要な保険は、ライフステージによって大きく変わります。「一度入ったら放置」が最も危険です。
必要な保険:ほぼゼロ
保険ニーズが最大化する時期
保障の「減らし時」
保険を「卒業」する時期
資産形成が進むほど、保険の必要性は下がります。「資産 ≧ 必要保障額」になった瞬間、その保険は不要です。保険は資産形成の初期にだけ必要な「つなぎ」のツール。一生入り続けるものではありません。
では、具体的にどう見直すか。以下の5ステップで進めてください。
加入中の保険をすべてリストアップ。保険種類・保障額・月額保険料・満期・特約を一覧表にする。
前述の計算式で「本当に必要な保障額」を算出。遺族年金・団信・貯蓄を差し引くのを忘れずに。
○×判定表に照らし合わせて、不要な保険を洗い出す。貯蓄型は払済保険への変更も検討。
残す保険の保障額を必要保障額に合わせて調整。ネット保険など低コストな商品への乗り換え検討。
毎年の確定申告時に保険の棚卸しをセットで実施。ライフイベントがあれば都度見直す。
新しい保険に加入してから古い保険を解約してください。先に解約すると、新保険の審査が通らなかった場合に無保険状態になるリスクがあります。特に持病がある場合は慎重に。
「どれから手をつければ?」と迷ったら、以下の優先順位で検討してください。上位ほど削減効果が大きい保険です。
保障と貯蓄を混ぜた非効率の代表格。実質利回りは年0.5%以下で、同じ保障額を掛捨てで確保し、差額をNISAで運用した方が圧倒的にお得。解約返戻金は元本割れの可能性もあるが、長期で見れば早い解約が有利。
削減効果:月1〜3万円日本には高額療養費制度があり、月の自己負担は年収に応じて約8〜25万円に抑えられる。医師なら貯蓄100〜200万円で十分対応可能。生涯の保険料総額と給付額の期待値を比較すると、ほぼ確実に保険料の方が多い。
削減効果:月3,000〜8,000円利回り0.5〜1%ではインフレに負ける。2027年からこどもNISA(年60万円・非課税)が始まれば完全に上位互換。死亡保障が必要なら掛捨て定期保険で別途カバーする方が合理的。
削減効果:月1〜2万円個人年金保険料控除(年4万円上限)のために加入する人が多いが、iDeCoの所得控除(掛金全額)の方が節税効果は圧倒的。利回りも低く、30年のインフレリスクを考えると非常に不利。
削減効果:月1〜2万円手数料が不透明で、為替リスクや運用リスクを保険会社に手数料を払って負う構造。外貨で運用したいなら、低コストの投信を直接買う方が100倍まし。保険の皮を被った高コスト金融商品。
削減効果:月1〜5万円貯蓄型保険を解約すると元本割れする場合がありますが、これはサンクコスト(埋没費用)です。過去に払った保険料は戻りません。大切なのは「今日からの最適解」。元本割れの損失よりも、今後20年間の保険料の総額+NISAで運用した場合の利益の方がはるかに大きい。感情ではなく数字で判断してください。
保険を見直して浮いた保険料を投資に回すと、どれだけの差がつくか。以下のシミュレーションをご覧ください。
| 月額削減額 | 年間削減額 | 10年後 | 20年後 | 30年後 |
|---|---|---|---|---|
| 1万円 | 12万円 | 約155万円 | 約411万円 | 約832万円 |
| 2万円 | 24万円 | 約310万円 | 約822万円 | 約1,665万円 |
| 3万円 | 36万円 | 約465万円 | 約1,233万円 | 約2,497万円 |
| 5万円 | 60万円 | 約776万円 | 約2,055万円 | 約4,161万円 |
※年利5%・毎月積立の複利計算。税引前。NISAなら運用益は非課税。
月2万円の保険料削減を20年間NISAで運用するだけで約822万円。保険で受け取る可能性のある給付金と比べて、どちらが現実的でしょうか?
掛金が全額所得控除。医師なら節税効果だけで年7〜15万円のリターン。
年120万円(月10万円)まで。運用益が永久非課税。全世界株式インデックスが王道。
年240万円まで。つみたて枠では買えない商品も選択可能。
子ども名義で年60万円。学資保険の代わりにこちらを活用。
保険の見直しは「守り」ではなく「攻め」の資産形成戦略です。不要な保険料は、毎月自動で消えていく「見えない出血」。その出血を止めて投資に回すだけで、10年後・20年後の資産は数百万〜数千万円の差になります。
私が生命保険に入ったのは、完全に親の勧めです。研修医になった時、母親に「医者になったんだから、ちゃんとした保険に入りなさい」と言われ、親の知り合いの保険担当者を紹介されました。当時は忙しさもあって、言われるがまま加入。それが「保険地獄」の始まりでした。
給料補償の保険、怪我や病気の時に出る保険…。「安心を買ったつもり」で入った保険が、いつしか毎月の支払い負担になっていました。保険証券の束を見るたびに「本当にこれ全部必要なのか?」とモヤモヤ。でも解約するにも内容を精査する時間がない。外来・当直・論文…忙しい毎日の中で、保険の見直しなんて後回しでした。
さらに厄介だったのが、保険の見直しに毎年追われるストレスです。保険会社からの確認連絡、担当者との面談…。貴重な休日の時間が潰れる。保険の確認は必要かもしれませんが、正直に言って医師にとっては「無駄な時間」以外の何物でもない。その時間があれば論文を1本読めるし、家族と過ごせる。保険のために費やす時間コストまで計算したら、相当な「隠れ損失」です。
保険の営業マンには色々な人がいます。感じの良い人もいる。でも毎回のように「先生、今ならもっと良いプランがありまして…」と新しいプランの提示があるんです。組み替えるたびに手数料が発生して、営業マンが潤う仕組み。ある時、はっきりと「組み替えはお断りします」と伝えました。そしてもう一歩踏み込んで、「解約する方針で考えています」と宣言したんです。あの瞬間のスッキリ感は忘れられません。
ただ、すべてをバッサリ切れたわけではありません。がん保険と先進医療特約だけは、最低限残しています。毎日、病気の患者さんを診ている立場として、がんのリアルを知っているからこそ「万が一」が頭をよぎるんですよね。合理的に考えれば貯蓄で対応できるはずなんですが…。正直、これは「必要かな? いや、必要ないかな?」と今でも揺れています。医師であっても、いや医師だからこそ、病気へのリアルな恐怖と合理的判断の間で葛藤するものです。
見直しの結果、不要な保険を整理して掛捨ての最低限の収入補償保険だけに切り替えました。浮いたお金は? もちろん全額NISAへ。投資信託の積立額を増やしました。保険に払っていたお金が、今度は自分の資産として育っていく。保険証券の束が減って、NISA口座の残高が増えていく。この変化を見るたびに「もっと早くやればよかった」と思います。
保険の見直しは、金銭的なメリットだけじゃない。毎年の見直しストレスから解放される「精神的メリット」がめちゃくちゃデカい。保険の束を管理する時間、営業マンとのやりとり、「これ本当に必要?」というモヤモヤ — 全部まとめてサヨナラできる。
シンプルにしましょう。掛捨ての最低限の保障 + 余ったお金はNISA。これが私の答えです。保険は複雑にするほど、保険会社が儲かる仕組み。医師の武器は「高い収入」と「貯蓄力」。この武器がある限り、分厚い保険証券は必要ありません。