📰 Dr. K's MORNING BRIEF
2026年9月11日(金)

差し引きで、見る。
出血は減り、心筋梗塞は増えた。

現役医師 Dr. K が厳選した、健康・医療・金融の今朝のヘッドライン。

おはようございます。金曜日の朝のレポートをお届けします。

今日の隠れたテーマは 「差し引きで、見る」今日の主題は、日本の心臓内科医たちがNEJMに出した試験です。心筋梗塞の治療でアスピリンを「引いて」みたら、出血は減った。でも、心筋梗塞や脳卒中は増えた。同じ号には、合計はまったく同じなのに、中身が入れ替わっていたという韓国の試験も載っています。何かを減らせば、別の何かが増える。大事なのは合計ではなく、何と何を交換したのかです。健康・研究・お金の3ジャンルで整理します。

🩺 健康・医療ニュース

1.【訂正】インフルの数字、9/10号は最新ではありませんでした — 全国は 1.76、東京は 2.65

まず訂正です。9/10号で「東京 1.49/神奈川 1.37/全国 1.11」とお伝えしましたが、これは最新の数字ではありませんでした。引用元に挙げた 9月4日の厚生労働省発表(第35週:8/24〜8/30)では、すでに次の水準になっていました。

地域9/10号で載せた数字9/4発表・第35週の実際
全国1.111.76
東京1.492.65
神奈川1.372.99

第35週の全体像(厚生労働省 9/4発表):

項目数値
全国の報告数6,543人(定点当たり 1.76
昨年の同じ週1,347人(定点当たり 0.35)→ 今年は約5倍
定点当たり 上位沖縄 8.50/岩手 4.33/新潟 3.58/神奈川 2.99/青森 2.88/東京 2.65

2.【全体は減った、子どもは過去最多】今週は「自殺予防週間」です

9月10日から16日は「自殺予防週間」です。あわせて、昨年の統計を確認しておきます(警察庁・厚生労働省「令和7年中における自殺の状況」)。

項目2025年
自殺者数(総数)19,188人(前年比 1,132人減
男性/女性13,176人/6,012人(いずれも減少)
小・中・高生538人(前年比 9人増)— 統計開始の1980年以降で過去最多
窓口連絡先
#いのちSOS0120-061-338(24時間)
よりそいホットライン0120-279-338(24時間)
いのちの電話0120-783-556(16時〜21時、毎月10日は24時間)
こころの健康相談統一ダイヤル0570-064-556(都道府県ごとに対応)
24時間子供SOSダイヤル0120-0-78310(24時間)
チャイルドライン(18歳まで)0120-99-7777(16時〜21時)

📚 注目論文・エビデンス

1.【今日の主題】アスピリンを引いたら、出血は減り、心筋梗塞は増えた — 日本発のPREMIUM試験

急性心筋梗塞(STEMI)でカテーテル治療(primary PCI)を受ける患者さんに、最初からアスピリンを使わずに済むかを調べた、日本の多施設ランダム化比較試験です(近畿大学ほか/NEJM 2026年8月29日オンライン版)。

研究の設計内容
対象primary PCI を受ける STEMI 患者 2,216人(日本)
比較低用量プラスグレル単剤(アスピリンなし) 1,109人 vs DAPT(アスピリン+低用量プラスグレル) 1,107人
期間12か月/PCIのに割り付け
主要評価項目12か月の 死亡・脳卒中・心筋梗塞 の複合(非劣性を検証、マージン HR 1.50)

結果を「減ったもの」と「増えたもの」に分けます

単剤(アスピリンなし)DAPTハザード比
死亡・脳卒中・心筋梗塞11.0%(124人)8.5%(94人)1.34(95%CI 1.02〜1.75)
大出血(BARC 3・5型)5.6%(61人)8.4%(92人)0.66(95%CI 0.47〜0.91)

同じ号に、もう1本。「合計は同じ、中身は逆」——韓国の A-CLOSE 試験(NEJM 同日):

研究の設計内容
対象薬剤溶出性ステント留置から12か月たった、虚血リスクの高い患者 3,203人
比較クロピドグレル単剤 vs DAPT延長(クロピドグレル+アスピリン)
24か月の結果単剤DAPT延長
総合(死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・脳卒中・出血)5.0%5.1%非劣性を達成
うち 虚血イベント3.7%1.6%HR 2.33(95%CI 1.47〜3.69)
うち 出血(BARC 2・3・5型)1.8%4.1%HR 0.43(95%CI 0.27〜0.67)

2. 70歳以上のスタチン、心血管イベントは3割減、でも「元気で長生き」は延びなかった — STAREE試験

心血管病・糖尿病・認知症のない70歳以上に、1次予防としてスタチンを「足す」べきかを調べた、プラセボ対照の二重盲検ランダム化比較試験です(オーストラリア/NEJM 2026年8月29日オンライン版)。

研究の設計内容
対象地域在住の 70歳以上 9,971人(平均 74.7歳、女性 51.9%)
比較アトルバスタチン 40mg 4,984人 vs プラセボ 4,987人
追跡中央値 5.9年
主要評価項目(2つ)① 心血管イベント ② 障害なき生存(死亡・認知症・持続する身体障害のいずれもない状態)

結果

評価項目スタチンプラセボハザード比
① 心血管イベント297人(1,000人年あたり 10.9)412人(同 15.5)0.70(95%CI 0.61〜0.82)= 30%減
② 死亡・認知症・持続する身体障害637人(同 21.6)676人(同 23.0)0.94(95%CI 0.84〜1.05、P=0.25)= 差なし
重篤な有害事象2.7%2.7%

💰 金融・税制ニュース

1. 日経平均は128.17円高の65,270.95円 — ただし途中で956円下げていた

9月10日の東京市場は、終値だけ見れば小幅高です。でも一日の中身は、まったく静かではありませんでした。

指標数値
日経平均 終値65,270.95円(前日比 +128.17円、+0.20%)— 3日ぶり反発・高値引け
日中安値64,186.68円(前日比 一時956円安
安値から終値までの戻り約1,084円
TOPIX4,054.58(+7.94)
値上がり/値下がり銘柄(プライム)723/783
長期金利(新発10年債)2.900%(+0.020)

2. 米PPIは前年比5.4%に加速 — 今夜のCPIの「前哨戦」、そして月曜へ

東京が閉まったあとの昨夜(日本時間 9/10 21:30)、米国の8月生産者物価指数(PPI)が発表されました。企業どうしの取引価格で、消費者物価(CPI)の先行指標として見られます。

米8月PPI結果予想前月
前月比+0.4%+0.4%+0.1%
前年比+5.4%+5.3%4.8%
Dr. K のひと言(金曜・"差し引き"の話)

まず訂正から。9/10号で、インフルエンザの数字を最新ではないまま載せていました。全国は 1.11 ではなく 1.76、東京は 1.49 ではなく 2.65しかも出典に挙げた厚労省の発表そのものに、新しい数字が載っていました。確認が甘かったです。申し訳ありません。

今日の主題は、日本の循環器の先生方がNEJMに出した試験です。心筋梗塞のカテーテル治療で、アスピリンを最初から使わないという挑戦でした。

結果は、大出血が 8.4% から 5.6% に減った。——ここまでは狙いどおりです。でも、死亡・脳卒中・心筋梗塞が 8.5% から 11.0% に増えた。

件数だけを差し引けば、+2.5 と −2.8 で、ほぼ相殺です。でも、私は患者さんに「出血は減りますが、心筋梗塞は増えます。差し引きゼロです」とは言えません。大出血と心筋梗塞は、同じ重さの「1件」ではないからです。

同じ号の韓国の試験は、もっとはっきりしていました。合計は 5.0% と 5.1%、まったく同じ。だから「非劣性」。でも中身は、虚血が2倍以上、出血が半分以下。——合計が同じでも、患者さんが経験することは逆なんです。

70歳以上へのスタチンの試験も、差し引きの話でした。心筋梗塞や脳卒中は3割減る。でも「元気で長生き」は延びない。副作用は少し増える。これをどう差し引くかは、その人が何を一番避けたいかで変わります。

相場も同じです。昨日の日経平均は、終値だけ見れば +128円でも途中で956円下げていました。そして指数は上がったのに、値下がりした銘柄のほうが多かった。

自殺の統計も、全体では1,132人減りました。でも小・中・高生は過去最多です。合計が良くなった、という数字の中に、悪くなっているところが埋もれている。

「差し引きでプラス」と聞いたら、何と何を差し引いたのかを見る。それが、今週いちばん伝えたかったことかもしれません。

今夜は米CPIです。結果は月曜の朝、一緒に落ち着いて見ましょう。週末くらいは、数字から離れて。金曜日、今週もお疲れさまでした🩺💰

つらいときは、ひとりで抱えずに。#いのちSOS 0120-061-338(24時間)。

📌 免責事項:本Morning Briefは情報提供を目的とした要約記事であり、医学的・投資的判断を行うものではありません。引用元の一次情報を必ずご確認ください。診療判断・投資判断は各専門家にご相談のうえ、ご自身の責任で行ってください。